研究概要 |
1. マレー半島内の7地点において、熱帯雨林に生息するアリ植物オオバギ属の共生アリを132コロニー採集した。標高1000m前後がオオバギ属のアリ植物種の分布上限であること、標高にかかわらず寄生昆虫の生息が認められることが明らかになった。 2. 寄生昆虫(タマバエ科、シジミチョウ科、カスミカメムシ科)のうち、カスミカメムシ科についてはマレー半島から3種が認められた。ボルネオから得られた4種も含め、これらは全てヒョウタンカスミカメ属の新種であった。 3. 系統解析に必要な遺伝子マーカーの検索ならびに開発を行った。その結果、アリ:6つの核遺伝子領域(28srRNA, Argk, Histon, Ef-1α, LWRh, wingless)、カイガラムシ:2つの核遺伝子領域(wingless, Ef-1α)、シジミチョウ:5つのmtDNAおよび核遺伝子領域(ND5, 16S rRNA, 28S rDNA, CAD, ITS-2遺伝子)をそれぞれ新たに開発した。 4. マレー半島とボルネオ島の13地点から採集したオオバギ共生アリについて、核DNAの8遺伝子領域(約3000bp)に基づく分子系統樹を作成した。ミトコンドリア系統樹とは多くの相違点が認められた。カイガラムシの核DNA系統樹を解析した結果、9つの系統に分かれ、それぞれの系統には単一のカイガラムシ種が対応していることが明らかになった。 5. 核マイクロサテライトマーカー5遺伝子座を用いて、ボルネオ島のLambir国立公園内において採集された99コロニーの共生アリの遺伝子型を決定しSTRUCTURE解析を行った。その結果、LambirのアリはmtDNA系統と大まかに一致する6つの遺伝的クラスターに分けられ、それぞれが高い寄主植物特異性を示すことが明らかになった。
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