研究課題/領域番号 |
22255003
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
村上 哲明 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (60192770)
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研究分担者 |
可知 直毅 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30124340)
瀬尾 明弘 総合地球環境学研究所, プロジェクト研究員 (30378567)
林 文男 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (40212154)
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キーワード | 植物 / 進化 / 分類学 / 植物地理学 / 小笠原諸島 |
研究概要 |
平成23年度はまず、昨年度と同様に、小笠原に自生する植物の起源地候補で小笠原産植物と同種あるいは近縁種と考えられるものの採集を行った。調査地は、グアム(2011年6月)、台湾北部・蘭嶼島(2011年9月)、ハワイオアフ島(2011年9月)、マレーシア(2012年2月)で、連携研究者と研究協力者を派遣した。現地調査では、DNA解析用サンプルの採集と花の性表現の調査を行った。得られた植物サンプルは、DNAの抽出を行い、葉緑体DNAのrbcL遺伝子や葉緑体遺伝子間領域のtrnT-L、rps16イントロンなどの塩基配列を決定し、サンプル間で塩基配列の比較を行うことで地域変異を検出し、より詳細な小笠原植物の起源地と考えられる地域を特定していった。本研究では、特に、網羅的に植物材料が入手できたヤエヤマアオキ属について、葉緑体trnT-L領域と核ITSとETS領域の塩基配列を用いた分子系統解析を行い、小笠原諸島固有植物ムニンハナガサノキの起源地推定を行った。その結果、ムニンハナガサノキは同じ亜種として扱われているアジア地域に広く分布するハナガサノキとは系統的に離れたところに位置し、台湾から中国南東部に分布するMorinda parvifoliaと姉妹群を形成した。よって、ムニンハナガサノキはハナガサノキとは起源が異なることが明らかになった。次に得られた系統樹に花の性表現を重ねたとこと、ムニンハナガサノキは被子植物では稀な性表現の雄性両全性異株に対して、その近縁種はすべて雌雄異株であることから、ムニンハナガサノキが示す雄性両全性異株は雌雄異株から進化したことが示唆された。本研究成果は国内で開催された関連学会で発表を行い、現在、論文を執筆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
限られた研究費と時間の中でも、平成22年度と23年度で小笠原産植物の起源候補地と考えられる地域の調査を研究計画通り行うことができている。そして、フィリピンやミクロネシアなどサンプル不足のため再調査を行う必要性のある地域もあるが、小笠原植物と同種あるいは近縁種と考えられる植物の採集は概ねできている。分子植物地理学的解析は、これまで培ってきた経験と知識を生かして順調に進んでおり、いくつかの植物種では研究成果を学会発表および論文執筆できるところまできている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、小笠原植物の起源地を探るための起源候補地のサンプルが概ねそろっている植物群については、より信頼性の高い分子系統樹を構築し起源地を推定するために、複数の葉緑体DNA遺伝子や遺伝子間領域を解析して分子系統解析を行う予定である。そして、比較のために必要な外国のサンプルについては、国内外の研究者にも提供を依頼するつもりである。
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