研究課題/領域番号 |
22255003
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
村上 哲明 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (60192770)
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研究分担者 |
可知 直毅 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30124340)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 植物 / 進化 / 分類学 / 植物地理学 / 小笠原諸島 |
研究概要 |
平成24年度は、小笠原固有植物ムニンハナガサノキの花の性表現調査と訪花昆虫調査および結実調査を行うために父島と母島へ2回(2012年6月、12月)現地調査をした。実験室では、前年度に引き続き、分子系統解析に用いるサンプルから、葉緑体DNAのrbcL遺伝子や遺伝子間領域のtrnT-F、rps16イントロン、核ITSやETSなどの塩基配列を決定した。チャセンシダ科とジンチョウゲ科の植物は、国内の研究者からDNA用サンプルを提供していただいた。今年度は、小笠原固有種ムニンシラガゴケ(シラガゴケ科、シラガゴケ属)、オガサワラキブリツノゴケ(ツノゴケ科、キノボリツノゴケ属)、ムニンハナガサノキ(アカネ科、ヤエヤマアオキ属)の起源に関する論文を投稿した。ムニンシラガゴケは、日本、台湾、中国南東部に分布する植物とクレードを形成したことから、本種は東アジア起源であることが推定された(公表)。オガサワラキブリツノゴケは南太平洋産のものとクレードを形成し、これまで近縁種と考えられていた日本および台湾に分布するキノボリツノゴケとは遺伝的に離れた(公表)。ムニンハナガサノキについては、本種の起源地を推定することと、ムニンハナガサノキが示す雄性両全性異株という性表現はどのように進化したか明らかにすることを試みた。系統解析の結果、ムニンハナガサノキは台湾から中国南東部に分布するGynochthodes parvifoliaと単一のクレードを形成し、これまれ同じ亜種として扱われているハナガサノキとは系統的に離れた。よって、ムニンハナガサノキは東アジア起源で、ハナガサノキとは起源が異なることが示唆された。次に性表現の進化過程を推定したところ、ムニンハナガサノキが示す雄性両全性異株は雌雄異株から変化したことが推定された(投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度から平成24年度まで、小笠原諸島をはじめ国内外の調査を計画的に行った結果、小笠原植物と同種あるいは近縁種と考えられる植物を網羅的に採集することができた。いくつかの小笠原植物については、得られたサンプルをもとに分子系統解析を行い、起源地を推定することができた。これらの成果の一部は、学会発表と専門誌の投稿を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、小笠原植物の起源地を探るために必要なサンプルとシーケンスデータが揃っているシダ植物チャセンシダ科について、論文執筆を行う予定である。小笠原固有植物ムニンアオガンピについては、サンプルとデータが概ね揃っているが、より信頼性の高い分子系統樹を得るためにまだDNAの分析が済んでいない外国産のサンプルを解析した上で、それらの情報も加えて分子系統解析を行い、得られた結果に基づいて論文執筆を行う予定である。
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