本研究の最終年度である平成25年度は、昨年度までに小笠原、琉球列島、フィリピン、中国、台湾、マレーシア、グアム、ハワイ等で採集してきた植物サンプルの未解析のものについて、葉緑体DNAおよび核DNAの塩基配列を決定・比較することによって、その起源地を推定した。小笠原産固有植物種であるムニンハナガサノキについては、東南アジアおよび太平洋島嶼域,琉球列島に生育する同属とその近縁属合計29種61サンプルを採集し,DNAの塩基配列にもとづく系統解析を行った結果、従来、同種として扱われていた琉球列島産のハナガサノキではんく、東南アジア(フィリピン,台湾)に分布するG. parvifoliaとクレードを形成した。よって、この小笠原産固有植物種は東南アジア起源であることが示唆された。他に東南アジア地域が起源であることが分かった種として,シロテツ類,シマギョクシンカ,チチジマベニシダなどがあった. 一方、小笠原産固有植物ムニンアオガンピについては,従来、ムニンアオガンピは琉球列島に分布するアオガンピと近縁関係にあると考えられてきたが、パラオ産W. elliptica,ならびにハワイの固有種W. uva-ursiとW. oahuensisとクレードを形成した。その結果、小笠原産ムニンアオガンピは太平洋島嶼域に起源したことが強く示唆された。他に太平洋地域が起源地であると推定された小笠原産の植物種には、モンパノキ,コハマジンチョウなどがあった。 ムニンアオガンピについては、小笠原諸島で性表現を調べた。その結果、葯のみが発達する雄株、逆に子房のみが発達し果実をつける雌株に加えて、葯と子房の両方が発達し、果実もつける両性株も少数ながら見いだされた。両生株は、両性花のみをつけていた。さらに、雄株と雌株の性比はほぼ1:1であることも分かった。 これまでの研究成果のうち、ムニンハナガサノキの研究成果については論文にまとめ、Mol. Phyl. Evol.誌において報告した。
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