研究課題/領域番号 |
22255007
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古市 剛史 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20212194)
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研究分担者 |
橋本 千絵 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (40379011)
坂巻 哲也 京都大学, 霊長類研究所, 研究員 (50402780)
田代 靖子 株式会社林原類人猿研究センター, 生態・社会学研究部, 研究員 (60379013)
伊谷 原一 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (70396224)
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80153419)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Pan paniscus / Pan troglodytes / 集団感関係 / 社会関係 / 攻撃性 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
平成24年度は、古市剛史、伊左治美奈、橋本千絵(他費)、田代靖子(他費)がウガンダのカリンズ森林保護区に出張してチンパンジーの野外調査を行った。また、坂巻哲也(他費)がコンゴ民主共和国ルオー保護区に出張してボノボの野外調査を行った。また、古市剛史が国際高等研究所カンファランス(京都)で、伊谷原一がヒトと動物の関係学会(東京)で、古市剛史(他費)、橋本千絵(他費)、田代靖子(他費)が国際霊長類学会学術大会(メキシコ)で、本研究の成果に関する報告を行った。 研究内容 1)集団間の敵対的・融和的行動の研究:ボノボとチンパンジー各2 集団を同時に追跡し、他集団との遭遇に関するデータを収集し、遭遇の回避、相手集団に対する接近、相手集団からの逃避などのパターンを調べた。これにより、遭遇を敵対的あるいは融和的なものにする条件について分析した。ワンバとカリンズにおいて観察された過去の遭遇事例についても、観察者から情報を収集して分析した。 2)集団内の攻撃行動とその抑制のための行動の研究:ボノボとチンパンジーの各2 集団で、攻撃行動とその回避・終結のための行動を記録して分析した。 3)競合資源と敵対的交渉の関係についての研究:食物資源については、ライン・トランセクトによる果実量センサスを毎月継続して行い、月々の果実の量および分布と、集団間・集団内の攻撃行動との関係を分析した。また、集団間の攻撃行動については遭遇の起こった場所の周辺にある果実樹の種類や分布を調べ、集団内の攻撃行動についてはそのとき採食していた食物の種類や存在量を記録し、これらの影響について分析する。発情メスについては、性皮の状態と性行動の有無を記録して発情状態をモニタリングするとともに、排卵や妊娠の有無を調べるために継続的に尿サンプルを収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チンパンジーおよびボノボの集団内の社会関係と攻撃性およびその抑制については、順調に研究が進んでいる。とくに、ボノボのメスの社会関係については、授乳中、妊娠中などの妊娠の可能性のない時期にメスが発情を示すという発情の長期化が、雌雄の社会関係だけでなく、血縁関係のないメス間の社会関係の形成にも役立っているという新しい知見が得られた。さらに、ボノボでこれまであまり研究のなかった野生下における敵対的交渉のあとの和解行動についても、研究が進展している。 一方集団感関係については、昨年度までその頻度がかなり低く抑えられていたが、平成24年度後半になって、チンパンジー、ボノボ双方の調査地で頻繁に集団間の出会いが観察されるようになり、順調にデータが集まり始めている。
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今後の研究の推進方策 |
4年目に入る平成25年度も、1)集団間の敵対的・融和的行動の研究、2)集団内の攻撃行動とその抑制のための行動の研究、3)競合資源と敵対的交渉の関係についての研究を継続し、データの蓄積を計る。とくに観察頻度の低い集団感関係については、チンパンジー、ボノボそれぞれについて対象集団を3つに増やし、観察例の増加を図るとともに、集団の組み合わせによる遭遇時の交渉の違いについても分析する。
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