研究課題/領域番号 |
22255009
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
平田 泰雅 独立行政法人森林総合研究所, 温暖化対応推進拠点, 室長 (50353826)
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研究分担者 |
谷口 真吾 琉球大学, 農学部, 教授 (80444909)
小野 賢二 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (30353634)
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キーワード | 河口型マングローブ林 / 地上部バイオマス / ネクロマス / 有機物組成 / 林分動態 / 高分解能衛星データ / 衛星LiDAR / ミクロネシア:タイ |
研究概要 |
ミクロネシア連邦ポンペイ島のマングローブ林において、森林総合研究所が1994年に設定した固定プロットのうち、河口型マングローブ林で2011年9月に毎木調査を実施した。プロットサイズは50m×200mで樹種別に幹直径を計測し、枯死木を把握した。設定時からの林分センサスデータを収集・整備してデータベース化した。このデータベースを用いて、地上部バイオマスと枯死木に由来するネクロマスなどの森林の動態を解析した。 次に、ポンペイ島サンゴ礁上林分にて採取した分解リターを用い固体核磁気共鳴法により有機物組成を分析した。マングローブの葉、根、材の各リターは時間と共に分解し、重量が減少した。各部位の理化学的性質の違いを反映し、その重量残存率は異なった(葉<根<材)。分解リターは新鮮リターに比べ、総じて疎水性有機物が相対的に増加した。一方各リターの疎水度は大きく異なる値を示した。リターの種類や分解場所(林床、泥炭内部)によりリター分解プロセスが異なることに起因している。これまでの毎木センサスデータを解析し、同林分の16年間の枯死木発生量を概算したところ、年間枯死木量は平均3.7t/ha/年であり、そのうち自然枯死に由来するものは2.8t/ha/年と試算された。 さらに、ポンペイ島に設定された固定プロットにおいて、60cm地上分解能の2時期の高分解能衛星データを比較することにより、林分の動態を把握した。その結果、胸高直径が35cmの立木について、枯死あるいは伐採により消失した樹冠を確認できた。 また、本年度からタイ国パンガ湾において20m×20mまたは30m×30mの暫定プロットを設定し、林分のセンサスを行った。この林分センサスデータと衛星LiDARの比較を行い、マングローブ林における3次元構造の把握を行った。その結果、マングローブ林では衛星LiDARから照射されたレーザー光が地表面まで到達し、林分高の測定が可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の調査において、当初予算使用に制限がかけられたため、ミクロネシア連邦で実施予定だった調査・実験の一部が実施できなかった。これについては平成24年度に持ち越して実施する予定である。その他の研究については、当初の予定通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
サンゴ礁上調査林分において、イングロースコア法によるコア試料を採取し、泥炭有機物の主たる起源であるマングローブ細根の年間生産量を定量する。異なる森林タイプにおける泥炭試料の近赤外分光スペクトルを測定し、泥炭有機物の質的な違いを定性分析する。また高分解能衛星データから抽出される林分動態から、地上バイオマスの変化量を推定する手法を検討し、マングローブ林の炭素蓄積過程の広域評価に必要となるパラメータを多変量解析により求める。
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