研究課題/領域番号 |
22255009
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
平田 泰雅 独立行政法人森林総合研究所, 温暖化対応推進拠点, 室長 (50353826)
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研究分担者 |
小野 賢二 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (30353634)
谷口 真吾 琉球大学, 農学部, 教授 (80444909)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マングローブ / 炭素蓄積 / 泥炭有機物 / リモートセンシング / 立地環境 / 国際研究者交流 / ミクロネシア / タイ |
研究概要 |
ミクロネシア連邦ポナペ島本島北側に2002年に設置した固定プロット(20m×100m)において、2005年に引き続き2012年8月に3度目の毎木調査を実施した。主要3種が分布する平均地盤高は、Sonneratia alba: 5.81㎝、Bruguiera gymnorrhiza:20.27㎝、Rhizophora apiculata:14.75㎝で、有意な差がみられた。立木密度は2002年の1885本/haから、2012年には1385本/haに減少した。死亡個体の74%は倒木、立ち枯れまたは消滅、26%が人為的伐採による。 次に、ポナペ島のR. apiculataが優占するサンゴ礁型マングローブ林において海側と陸側の小プロットを設営して、イングロースコア法による細根生産量調査を実施した。その結果、表層0~10 cm深で細根の生産量は低い傾向がみられたものの、10 cm深以下の各深度別の細根生産量には明瞭な違いは認められなかった。海側と陸側での細根生産量はそれぞれ7.2+/-3.2、5.7+/-3.8 t ha-1 year-1と見積もられ、両地点間に有意な差は認められなかった。同試験地における落葉リター生産量は10 t ha-1 year-1 前後であったことから、細根生産量はその6~7割に匹敵する量であることが明らかとなった。 また、ポナペ島に設定された固定プロットにおいて、60cm地上分解能の2時期の高分解能衛星データそれぞれから得られる樹冠サイズの情報から炭素蓄積推定を行った。その結果、胸高直径が35cmの立木について、枯死あるいは伐採により消失した樹冠については炭素蓄積変化として捉えることができるものの、定期成長や下層にあって観測できない立木の影響により、短期間の林分としての変化を高分解能衛星データから捉えることは困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の実施においては、昨年までと同様に、海外カウンターパートと良好な関係をもち、現地調査等で十分な協力が得られた。また、炭素動態解明のため継続調査してきた固定プロットの調査も順調に行われた。 本研究では、マングローブ林の立地環境・発達段階と地上バイオマスの変化量との関係解明のため、地域による立地環境や発達段階の異なるマングローブ林を対象として、既存および本研究で追加するセンサスデータを用いて林分の動態をバイオマス量変化の観点から明らかにし、立地環境・発達段階の違いが炭素蓄積の過程に与える影響を評価する。これまでに立木の幹直径とともに樹高の計測を行い、林分の3次元構造の復元を図り、過去に行われた林分センサスのデータを収集・整備してデータベース化を行った。これは当初の予定通りである。 また、地下部泥炭層における炭素貯留過程を解明するため、設定された調査区の立地環境の違いを明らかにするとともに、地下部バイオマス推定、マングローブ泥炭堆積構造の解析、深度別の泥炭生成年代測定等によりマングローブ成立から現在までの地下部での炭素蓄積状況を明らかにしてきている。併せて固体13C核磁気共鳴法による泥炭有機物の化学特性解析から、泥炭有機物の分解特性と堆積過程を推定しており、解析がおおむね計画通りに進んでいる。 さらに、衛星技術による炭素蓄積過程の高精度把握手法を開発するため、対象地域に対して時系列の高分解能衛星データを取得・整備し、画像間比較のための前処理を行った。これらの画像に流域抽出法を適用して、高分解能衛星データから立木の樹冠の抽出し、これらを比較することにより、林分の動態を明らかにした。また、対象地域の衛星LiDARデータと、林分センサスから得られた調査区の林分の3次元構造との比較を行うため、平成25年にプロット追加することにより、当初の研究目的が達成される見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
マングローブ林がかつてコンセションによって伐採されていたタイ・ラノンのマングローブ林に設置された調査プロットにおいて、毎木の直径を再測し、枯損と新界の状況を調べる。この結果から、対象地域における森林の動態解析を行う。合わせて、地盤高による冠水頻度が樹木の成長に与える影響を明らかにするため、ミクロネシア・ポナペ島における固定プロットで地盤測量を行い、固定プロットでの毎木調査データと地盤高とを比較する。 ミクロネシア・ポナペ島に平成23年に設定した調査区において再センサスを行い、立地環境・発達段階と炭素蓄積過程の関係を調べる。また、採取した不攪乱コアの分析結果および泥炭有機物の化学構造分析による分解特性の評価から、立地環境・発達段階の違いよる地下部泥炭層の炭素の貯留過程を明らかにする。 平成24年に引き続き、衛星LiDARデータの観測波形の解析結果と比較するための地上での暫定プロットを設置し、樹高と幹直径、樹種に関して毎木調査を行う。この結果から得られた林分の最大樹高や、平均樹高、地上部バイオマスと、衛星LiDARデータの観測波形の解析結果とを比較し、地上部バイオマスを推定するためのモデルを作成する。また、高分解能衛星画像から林相区分された結果とモデルを組み合わせることにより、マングローブ林の広域での地上部バイオマスのマッピング手法を開発する。
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