研究課題/領域番号 |
22255011
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
杉村 和彦 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (40211982)
|
研究分担者 |
末原 達郎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00179102)
池谷 和信 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 教授 (10211723)
嶋田 義仁 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (20170954)
杉山 祐子 弘前大学, 人文学部, 教授 (30196779)
津村 文彦 福井県立大学, 学術教養センター, 准教授 (40363882)
阪本 公美子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (60333134)
鶴田 格 近畿大学, 農学部, 准教授 (60340767)
池上 甲一 近畿大学, 農学部, 教授 (90176082)
松田 凡 京都文教大学, 人間学部, 教授 (90288689)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | アフリカ経済 / 内発的発展 / モラル・エコノミー / 社会的連帯 / 社会開発 / 地域間比較 / 生業間比較 |
研究概要 |
タンザニアの中でも乾燥度の高いドドマ周辺では、農牧民として多数の大型家畜の牛を有するゴゴ社会の中でのNGO地球緑化の会の植林事業や農業開発などの事業展開を取り上げ、その中での、「農」を軽視し「牧」に高い価値を置く行動様式に着目する。ここにはその価値意識の背後にある社会的富としての家畜の位置づけやその財を通しての「人間の再生産」を重視する、広くアフリカの農牧民に通底するモラル・エコノミーの特質を検討する作業を推し進めることができた。 とくに、昨年より推し進めている調査サイトで、タンザニアドドマ大学のカウンターぱーととともに、地域住民も交えた農村の内発的発展にかかわるシンポジウムを開催すれ宇ことができ、この地域の中心的名課題である常襲する飢饉や、農牧の変容、伝統的急進システムの変容、自然資源の価値化プロセスなどの問題を深めることが出来た。 同時に地域間比較のもう一つの拠点となるタイにおいても研究の拠点となる地域とのラポールの端緒を切り開くことが出来た。またタイからの二人の研究者の招聘を行い、sufficient economy(足るを知る経済についての研究会を持つことが出来た。 理論的な研究の深化としてハイデンを中心として展開されたアフリカ小農論争を参加研究者の間で読み直し、変貌するアフリカ農村を背景として時のその議論の現代的な意義について報告書にまとめることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたタンザニアにおける複数の拠点が未だ達成出来ていないが、ドドマ地域での農牧民のモラル・エコノミー研究は、地域の大学の協力もあり、予想以上の展開を示している。タンザニアの中でももっとも停滞しているところの特質を内部の視座から取り出す視角と共に、そこでの村人を交えた参加型の議論は予想を超えて、様々な新たな研究構想をメンバーの中でも生み出す可能性が出てきた。 一方では現地研究者とのワークショップを繰り返し行い、論点を整理するとともに、一方では共同で広域的ないしは集中的なデータ収集を行い、国際的な共同研究の端緒を開くことが出来つつあり、将来的に大きな成果を期待できる状況になっている。ただこの研究はアフリカ・モラル・エコノミーという固有のモラル・エコノミーの特質をあぶりだすことを目的にしており、そのために様々なレベルでの地域間比較を研究の一つの目標としてきたが、アフリカの内部でも、また東南アジア等との比較も研究資料の十分な蓄積を持つためにはもう少し時間を必要とする。 しかし全体として、おおむね順調に進展しているということが出来る。
|
今後の研究の推進方策 |
各地域の担当者は、補足のための現地調査を行う。また前年度までの知見を生かし、アフリカ・モラル・エコノミーを軸として、近代化のゆがみと従前の社会開発の視点の限界を超えて、社会的連帯と社会的平等を重視するアフリカ型の新しい開発モデル構築のための研究会を学際的、かつ地域間比較の視点から集中的に実施する。また上記のテーマについてハイデン、ルタトーラ、マギンビ教授、ブライソン博士などの海外共同研究者を招いて国際的なシンポジウムを共同で行う。タンザニアにおいて、8月に行うアフリカ・モラル・エコノミーに関する国際シンポジウムに、「アフリカ小農問題とモラル・エコノミー」の議論の場を設ける。この問題の国際的な研究者であるハイデン教授、ブライソン教授、さらには、地域間比較の対象としての東南アジア・タイからこの問題に詳しいポーパン博士をこのシンポジウムに招聘する。これらのメンバーと地域の中核の大学としてのドドマ大学のムワムフーペ教授を中心した研究チームとシンポジウムに参加する日本人研究者の間で、長期の研究構想を立てる。そのためのワークショップでは、この問題に対する現代的視角からの論点の整理と方法上の諸課題の検討を行う。特に、南南問題の対象国家としてのタンザニアの中で、より停滞性の高い、ドドマ周辺の農牧民社会において、国際共同の予察的な共同調査を行い、現場の実態を踏まえた、研究構想とその実現の可能性を検討する。この総括的検討の後、代表者および、分担者、連携研究者、研究協力者は日本農業経済学会、地域農林経済学会、日本アフリカ学会、国際開発学会、日本文化人類学会、生態人類学会などにおいて、大会時の口頭発表や学会誌への論文寄稿という形で公表する。これらの成果をまとめて、最終的には英文の報告書を公刊する。またそれとともに、国内においても専門書の出版を行う。
|