研究課題
本年度はインドネシア中部ジャワ州ウォノギリ県のクドゥワン川上流の概況を把握した。標高1000m以上の森林帯は国有地であるが、かつて天然の混交林で入会地として住民に利用されていたが、1970年代半ば以降森林公社によって天然林は伐採され松の植林が進められ現在は松の単相林となり公社によって松ヤニが採取され、住民の利用は林床に生える野草の採取程度に限られる。尾根を沢に向かって下ると何か所もの湧水ポイントがあり、周年水が涸れることはなく灌漑および家庭用水の貴重な水源となっているが、地形が許す限り稲や畑作物が栽培され急傾斜地での温帯野菜(キャベツ、ニンジン、ジャガイモ、インゲン等)の連作もあり、土壌流出・環境汚染が懸念される。標高600-800mの地帯は、棚田、傾斜畑、民有林、屋敷林および集落が入り混じっている。山裾の棚田にはコンクリート水路と細く入り組んだVCPパイプで水が引かれ5作/2年の稲作が営まれている。天水のみに頼る畑ではキャッサバとトウモロコシが主な作物で、それらに加えてインゲン、ラッカセイ、ピジョンピー、タロイモ、バナナといった多様な作物が複雑に組み合わされている。民有林や屋敷林では、チーク、センゴン、マホガニーといった用材木や丁子、カシューナッツ等の果樹が植えられている。この一帯は石灰岩に火山灰土壌が堆積した急峻な地勢をなしており、雨期に降水が集中することも相まって土壌侵食には極めて脆弱で、テラスや石積みなどの土壌保全工法を施していない傾斜畑では土砂崩れが頻発している。特に2007年12月の集中豪雨は多くの橋を破壊するほどの甚大な被害をもたらした。この災害を契機として2008年から8つの関連機関がコンソーシアムを形成して、土壌保全と所得向上を目的としたアグロフォレストリー(ゴム、砂糖椰子、サラック、レモングラス)普及事業が開始された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (8件) 図書 (6件)
島根大学生物資源科学部研究報告
巻: 15 ページ: 43-48
International Archives of the Photogrammetry, Remote Sensing and Spatial Information Science
巻: 38(8) ページ: 477-481