研究課題
エイズウイルスが最初に人間社会に出現したのは、これまでの様々な研究から中央部アフリカ地域内の何処かであろうという説に研究者らの間で異論はない。しかし、具体的に何時、何処でなのかとなると、まだ明快な答えが出ている訳ではない。本研究では、この疑問に答えるべく、コンゴ盆地内に焦点を絞り、可能な限り多くの地域から集めた検体を分子疫学的に解析することにより、エイズパンデミックの謎を解き明かすことを目的としている。今年度は、先ずコンゴ民主東方の北キヴ州から収集した50検体についてpol領域の一部をPCRし、得られた塩基配列から分子系統解析を行った。その結果、大半の約7割近くがサブタイプD(B)で、他にA、D、C、Gなどがわずかに見られる程度であった。これまでのコンゴ民主におけるサブタイプ分布状況は非常に多様性に富むことが特徴で、このように偏った分布を示したのは初めてである。サブタイプDと同Bは、元来非常に近隣であるため、これがDであるのか、あるいはBであるのか、これだけでは判定し難い。また今年度は新たに赤道州北辺の中央アフリカ共和国に近いGemenaという町周辺の調査を行った。コンゴ盆地の中央部は、これまでの調査によって最もHIVの遺伝的多様性が高いことが知られており、その北側か、あるいは南側か、今後の焦点を絞るために設定した調査地点である。まだ解析が完全には完了していないが、ここでも多様なサブタイプが得られており、エイズウイルスが出現した場所という意味では、このコンゴ盆地内であることはほぼ確実であろうと思われた。多様な型のHIVが同じ地域に流行していると、同一患者に異なった株が同時に感染する、いわゆる重感染という現象が起こることがある。本研究では、次世代型DNAシーケンサーが、そうした重感染の検体を迅速かつ定量的に解析する際に極めて効力を発揮することも明らかにした。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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