研究課題
ラオス国のMDGsの実現には山岳民族の保健の向上が不可欠であるが、その実態は不明である。本研究はラオスの山岳民族再定住地区(カムアン県内およびアタプー県内)住民の水系感染症について、同地区の生業文化の把握を通じてその実態を明らかにし、対策に関わるリスク管理手法を開発することを目的としている。対象疾患は細菌性下痢症、アメーバ赤痢、フィラリア症、吸虫症である。6月に現地研究カウンターパートであるラオス国立パスツール研究所所長と日本側研究者を交え研究会議を実施した。同会議で研究計画が承認され、11月には同国の倫理審査会からも正式に承認された。アタプー地区調査では対象とした43名の住民の血液サンプルからPCR法により7名のフィラリア陽性例(16%)を新たに報告した。同地区での下痢症起因菌に関わる市場食品調査では魚、豚、水牛、鳥の19検体中13件(68%)のサルモネラを検出した。またビブリオも高頻度で検出したことから同地区の下痢症のリスクが高いことが判明した。さらに同市場で得た爬虫類3個体全てから条虫(Spirometra erinaceieuropei)を検出し報告した。カムアン地区での人体寄生虫症リスクに関わる研究成果として、977名の住民の糞便検査の結果、何らかの消化管寄生虫を有する住民356名(感染率:36%)を認めた。主な感染種は鉤虫(20%)及び鞭虫(12%)、回虫(7%)であった。感染例の2割が多重感染者で、主に鉤虫との重感染であった。メコン住血吸虫卵陽性例は無かったが、タイの共同研究者がすでに同水域にその媒介貝が分布することを明らかにしており、患者の移住による疾患導入のリスクを指摘した。さらに本年度は、肺吸虫の中間宿主で、ラオスでは記録の少ないサワガニ類の既知種2属6種を再記載し、新たに不明種1種を記載した。
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帝京平成大学紀要
巻: 22 ページ: 205-226
Asian Pacific Journal of Tropical Medicine
巻: 3 ページ: 939-942