研究課題/領域番号 |
22256004
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山下 俊一 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30200679)
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研究分担者 |
高村 昇 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30295068)
大津留 晶 長崎大学, 長崎大学病院, 准教授 (00233198)
中島 正洋 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50284683)
光武 範吏 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50404215)
サエンコ ウラジミール 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (30343346)
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キーワード | チェルノブイリ / 甲状腺がん / 分子疫学調査 / がん組織バンク / 放射線影響 |
研究概要 |
今年度は、継続してベラルーシにおける連携研究拠点を基盤としつつ、チェルノブイリ分子疫学調査を推進し、同時に被ばく集団のコホートをウクライナでも確立した。長崎からの人材派遣、現地研究者の招聘事業によって病理組織診断、血液サンプル収集のプロトコールの標準化を果たし、ウクライナからもサンプルを収集し、核酸抽出を軌道に乗せることが出来た。チェルノブイリ原発事故後の甲状腺癌症例をさらにカバーでき、当研究における分子疫学調査は世界でも唯一無二のコホートとなり、その学術的意義は極めて大きい。得られた核酸は、順次、SNP解析を行い、データの蓄積、統計学的な処理を進行中である。これにより、散発性甲状腺癌の発症関連遺伝子であるNKX2-1近傍のSNPは、放射線誘発癌との関連は否定的となった。これは、放射線被曝による甲状腺癌へのなりやすさの予測、また発癌メカニズム解明のためにも重要な知見である。さらに、Chernobyl Tissue Bank運営のためにも人材派遣を行い、各共同機関との連携、生体試料・データの標準化も継続して行った。 しかし、今年度は東日本大震災における福島第一原発事故のため、当初の計画に加え、震災対応のために、当研究における国際連携ネットワークを活用した。具体的には、WHO緊急被ばく医療ネットワークの関係者会議を福島で開催した。さらにChernobyl Tissue Bamkやロシア、ベラルーシ、ウクライナの共同研究者と連携し、チェルノブイリ原発事故で得られたエビデンス、経験を福島での震災対応に活かすことが出来ている。特に、ベラルーシから2名の甲状腺研究者を招聘し、長崎大学で共同研究を推進すると同時に、福島県立医科大学において推進している県民健康管理調査事業の視察と、甲状腺検査に関する意見交換等を行い、チェルノブイリの経験を福島で活かす為に継続した人材交流と共同研究の合意に達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は震災対応のため多忙を極めたが、研究分担者、さらに国内外の共同研究者の献身的な働きにより、当初予定した研究自体の進行は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に加え、震災による福島第一原発事故対応にもネットワークを活用し、被ばくリスク管理の推進も合わせて図る。特にチェルノブイリの教訓を多方面に活かし、甲状腺研究の推進以外にも甲状腺がんリスクの評価とリスク管理についても社会医学的な研究を推進する。
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