本研究の目的は、計算幾何学におけるユークリッド幾何情報処理と、離散的なグリッド位相によるデジタル情報処理の融合である。幾何学最適化問題に対する計算手法において、ユークリッド距離空間と離散的なデジタル空間で乖離していた計算幾何学の枠組みを融合し、さらに柔軟な幾何学図形処理を行う新しい取り組みを提案する。 特に代表者が最近開発した整合的デジタル線分の概念を用いてデジタル空間にユークリッド幾何学の類似の公理形を持つ構造を入れ、様々な図形描画、画像処理、最適化の問題をデジタル空間で行う場合の幾何的な整合性、計算量的な観点を考察し、デジタル幾何学概念による計算幾何学の取り扱いの理論構築を目的とすると共に、画像処理やデータマイニングへの応用を与える。 平成22年度は、理論的な枠組みの強化としてデジタル空間における最適化、特に同時長方形や同時タブロー切出し問題の計算複雑度の解明、デジタル線分族を用いたデジタル凸図形の計算やデジタル星型図形を組み立てて出来る図形の高速計算、ゾーン図と呼ばれる均衡図の解析とデジタル計算幾何を用いたアルゴリズム設計、さらにイメージ情報検索における新たな不変量の探究と、アルゴリズム、さらにシステム設計の試作を行った。成果は予定していたSOCG2010での2本を含む5本の一流学術誌及び一流国際会議プロシーディングス論文に発表し、さらに格式の高い京都賞記念シンポジウム(Lovasz氏の京都賞受賞に際して稲盛財団主催のシンポジウム)を含む4件の招待講演、その他学会講演を行った。また、予定通り韓国、ハンガリーなどの若手研究者を短期招聘し、共同研究を開始した。
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