研究課題/領域番号 |
22300001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
徳山 豪 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (40312631)
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研究分担者 |
全 眞嬉 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80431550)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 計算幾何学 / アルゴリズム / 離散幾何学 / 画像処理 / 最適化 |
研究概要 |
本研究の目的は、計算幾何学におけるユークリッド幾何情報処理と、離散的なグリッド位相によるデジタル情報処理の融合である。幾何学最適化問題に対する計算手法において、ユークリッド距離空間と離散的なデジタル空間で乖離していた計算幾何学の枠組みを融合し、さらに柔軟な幾何学図形処理を行う新しい取り組みを提案する。 特に代表者が最近開発した整合的デジタル線分の概念を用いてデジタル空間にユークリッド幾何学の類似の公理形を持つ構造を入れ、様々な図形描画、画像処理、最適化の問題をデジタル空間で行う場合の幾何的な整合性、計算量的な観点を考察し、デジタル幾何学概念による計算幾何学の取り扱いの理論構築を目的とすると共に、画像処理やデータマイニングへの応用を与える。 平成24年度は、デジタル線分族を用いたデジタル凸図形の計算やデジタル星型図形を組み立てて出来る図形の高速計算、デジタル計算幾何を用いたアルゴリズム設計、さらにイメージ情報検索における新たな不変量の探究と、アルゴリズム、さらにシステム設計の試作を行った。特に、イメージ切り出しに関しては、今までに開発したアルゴリズムを基盤に統合的なシステムを構築し、実験を行っている。成果は4本の一流学術誌及び一流国際会議プロシーディングス論文に発表し、さらに4件の招待講演、その他多数の学会講演を行った。 また、韓国POSTECHとの共同研究の実施、AAAC国際会議誘致(2013年4月松島開催)を行い、今後の国際共同研究への継続を計画している。また、関連した幾何学に関する成果を、計算幾何学分野で最高権威である国際学会SOCGにおけるYoung Researcher's Forumで、世界の12人の若手博士学生の一人として、本研究に関わる研究室学生のNatsuda Kaothantong が研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
スイス、韓国との国際共同研究協力を含め、活発に活動している。すでに10編以上の論文を国際会議、ジャーナルに出版しており、また、研究集会の主催、共催を行っている。特に2012年度採録された画像切り出しの新手法にかかわる論文は、画像処理分野でトップジャーナルであるComputer Vision and Image Understandingに採録されており、世界的に大きなインパクトがあり、この成果はすでに米国、香港などの世界の研究者から引用され、追従の研究が開始されている。また、同じく2012年度に刊行されたゾーン図の存在に関する新しい成果は、数学専門誌として150年近い歴史を持つ権威あるMathematish Anallenに掲載され、この成果も海外の研究者によって追加研究が行われている状況である。これらの成果は、従来の研究の改善ではなく、新しい概念の提出とそれを広げた新しい研究対象の提案であり、それらに世界の研究者が注目しているということは大きな成果であると考える。 また、国内のERATOなどの大型プロジェクトとのジョイントセミナーも開始し、研究の成果の波及も始まっている。以上のことから、研究計画に沿って順調に進展し、更に研究の広がりの点においては、予想を上回る進展を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
下記の3つのプロジェクトを遂行する。平成25年度にはAAAC(アジアアルゴリズムと計算国際学会)の年会を宮城県で開催し、平成26年度には、関連する世界で最高権威の国際学会であるACM計算幾何学国際会議を京都で研究代表者の徳山が開催し、そのサテライトイベントで、本研究の成果を発表する予定である。 1.整合的デジタル線分の理論の整備を土台に、デジタル幾何学を構築する。まず、整合的デジタル線分の公理系と構成的な特徴づけの完全な対応を与える。次に、平行移動不変性を持つ整合的デジタル線分族がどのようなものであるかを同定し、高次元におけデジタル超平面を矛盾なく定義できるもののクラスを調べ、立体幾何学の構築を目指す。 また、デジタル直線族がなす擬似直線アレンジメントの組合せ的性質と、対応する置換の群論的作用を明らかにすることを目指す。 2.デジタル凸図形を利用して、全らがデータのスムージングの目的で研究している曲面の最適近似(ピラミッド近似)システムの一般化を行い、実装と実験を行う。また、デジタル平面における柔軟かつ最適化された図形切り出しのアルゴリズムの高速化を検討し、システム設計を行う。また、置換の作用により自然に変換する整合的デジタル直線族を利用して、図形のモルフィングを考察し、グラフィクスに応用する目的で実装し、実験を行う。 3.デジタル位相をベースにした幾何学最適化問題に対して、理論的にロバストなアルゴリズム体系を実現することを目指す。研究期間の5年間においては、計算幾何で扱う凸包や交差判定などの問題をデジタル幾何学の範疇で考察した場合の計算理論的な計算量解析、曲面や曲線、特に再帰的定義を必要とする非代数的な幾何学対象に対しての精度解析を行う。
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