研究課題/領域番号 |
22300004
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山下 雅史 九州大学, 大学院・システム情報科学研究院, 教授 (00135419)
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キーワード | 分散システム / ランダム性 / 乱歩 / 確率的自己安定 |
研究概要 |
(分子のような)記憶や識別子を持たない構成要素から構成される(生物のような)巨大分散システムが、自己組織性、自己安定性(故障から自動的に回復できること)、自己改善性といった高度な自律性を獲得できる理由を分散計算論の立場から理解し、自律性を有する(人工の)巨大分散システムの設計論を構築することが本研究の目的である。巨大性、動的性、ランダム性、低信頼性、記憶量という観点から巨大分散システムを理解しようとしているのだが、本年度はまず、自律的システムにおけるランダム性の役割を検討した。分散システムに出現するランダム性は分散アルゴリズムのランダム化と分散システムが置かれる環境が持つ揺らぎの確率的モデル化に由来する。そこで、確率的自己安定システムをこれら2つのランダム性の観点から検討し、故障からの復帰時間が有限となるために必要となる乱択分散アルゴリズムが満たすべき条件を明らかにした。これは、ざっくりと述べると、環境が持つ最悪のランダム性に耐えるために必要なアルゴリズムのランダム性を明らかにしようとしたものである。このような、ランダム性を持つ分散アルゴリズムの実行過程を含めて、多くの確率的システムの動作は有限グラフ上の乱歩(あるいは有限状態マルコフ連鎖)によって表現される。しかし、分散システムに由来する乱歩では、乱歩が行われる有限グラフが時刻によって変化することがしばしば起こる。また、一つの有限グラフ上を複数の粒子が同時に移動するような乱歩モデルでモデル化できる場合も多い。そこで、このような、確率的分散システムに由来する特徴的な乱歩も検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討方針がうまく当たって、うまく結果に結びついた。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね従来の方針を維持する。具体的には、確率的自己安定システムについて通信の局所性とシステムの巨大性の観点から検討する。すなわち、分子システムでは、分子間の影響は局所的なものに限られる。分子システム全体の自己安定性は従って分子数が巨大であることと揺らぎを持つ環境に置かれていることに由来すると考える。この立場の正当性を検証し、人工分散システムへのこの考え方の適用を検討する。
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