研究概要 |
本研究では,時々刻々変化するネットワーク環境に構築される,超大規模分散システムの安定性と消費エネルギーの間のトレードオフ関係を解明し,エネルギー効率に優れた自律適応型分散アルゴリズムの設計法を確立することを目的とする.本年度は,昨年度に引き続き,研究課題(1),(2)に取り組むとともに,研究課題(3),(4)への取り組みを開始した.各研究課題についての成果を以下にまとめておく. (1)分散アルゴリズムの消費エネルギーのモデル化 昨年度に行った,無線センザネットワークにおける分散アルゴリズムの通信効率の定式化を拡張し,通信効率に優れた分散アルゴリズムの設計を行った. (2)断続的に変化するネットワーク環境における分散システムの安定性の定量指標の提案 昨年度,ビザンチン故障封じ込めの概念と,その評価指標を提案した.今年度は,さまざまなモデルや問題に対して,ビザンチン故障封じ込めを実現する分散アルゴリズムの設計を行った. (3)分散システムの消費エネルギーと安定性とのトレードオフの解明 分散システムの消費エネルギー低減化を実現するには,モバイルエージェントを導入し,エージェント数制御により,分散システム全体の消費エネルギーを制御することが有用であると考えられる.そこで,モバイルエージェントシステムの消費エネルギー(主として,モバイルエージェントの移動数で評価される)とシステムの安定性の間のトレードオフについて考察し,いくつかの結果を得た. (4)分散システムのエネルギー効率にすぐれた安定化手法の確立 (3)と同様,モバイルエージェントを利用した分散システム設計について,エネルギー効率化に有用なサブタスクをいくつか提案し,それらを実現する手法を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エネルギー効率に優れた自己安定アルゴリズムの定式化,および,設計については,当初計画以上に進展している.その成果が認められ,2011年10月に開催された国際会議International Synposium on Stabilization, Safety and Security of Distributed Systems(SSS)で,招待講演を行った.さらに,本研究の目的達成にモバイルエージェントが有用であるとの着想を得ることができ,研究対象をモバイルエージェントに拡張し,エネルギー効率化について,既にいくつかの結果を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展している.今後,研究成果の拡張・深化のために研究を推進することに加えて,研究成果を国際会議,国際論文誌などに,発表していく.また,これまでの研究では,理論的成果が先行しているが,これらの理論的成果の実環境での有用性についても,実システムを用いた実験等により実証していく予定である.
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