研究課題/領域番号 |
22300009
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
増澤 利光 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50199692)
|
研究分担者 |
大下 福仁 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (20362650)
角川 裕次 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (80253110)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | アルゴリズム / ディペンダブル・コンピューティング / 分散システム / ネットワーク / エネルギー効率化 |
研究概要 |
本研究では,時々刻々変化するネットワーク環境に構築される,超大規模分散システムの安定性と消費エネルギーの間のトレードオフ関係を解明し,エネルギー効率に優れた自律適応型分散アルゴリズムの設計法を確立することを目的とする.本年度は,主として,研究課題(3), (4)に取り組んだ.各研究課題についての成果を以下にまとめておく. (3) 分散システムの消費エネルギーと安定性とのトレードオフの解明 (a) 時々刻々変化する無線ネットワークを対象に,高度な自律適応性を実現する自己最適化ルーティング・アルゴリズムを提案した.さらに,その消費エネルギーと安定性の間のトレードオフについて考察し,いくつかの結果を得た.(b) 分散システムの消費エネルギー低減化を実現するには,モバイルエージェントを導入し,エージェント数制御により,分散システム全体の消費エネルギーを制御することが有用であると考えられる.そこで,モバイルエージェントシステムの消費エネルギー(主として,モバイルエージェントの移動数で評価される)とシステムの安定性の間のトレードオフについて考察し,いくつかの結果を得た. (4) 分散システムのエネルギー効率にすぐれた安定化手法の確立 (a) 時々刻々変化する無線ネットワークを対象に,高度な安定性を実現する自己安定アルゴリズムの汎用的な設計法を提案した.さらに,その消費エネルギーと安定性の間のトレードオフについて考察し,いくつかの結果を得た.(b) モバイルエージェントを利用した分散システム設計について,エネルギー効率化に有用なサブタスクをいくつか提案し,それらを実現する手法を提案した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,時々刻々変化するネットワーク環境に構築される,超大規模分散システムの安定性と消費エネルギーの間のトレードオフ関係を解明し,エネルギー効率に優れた自律適応型分散アルゴリズムの設計法を確立することを目的とする.具体的には,以下の研究課題に取り組んでいる.(1) 分散アルゴリズムの消費エネルギーのモデル化.(2) 断続的に変化するネットワーク環境における分散システムの安定性の定量指標の提案.(3) 分散システムの消費エネルギーと安定性とのトレードオフの解明.(4) 分散システムのエネルギー効率にすぐれた安定化手法の確立. 研究課題(1)および(2)については,当初の目的を達成している.具体的には,(1)に関しては,主として,通信量に着目した消費エネルギーのモデル化を行った.(2)については,緩自己安定性,出力安定性,故障封じ込め等のさまざまな安定性の指標を確立した. 研究課題(3)については,全域木構成,リーダ選出などの基本的な問題について,(1)および(2)で提案したモデルや安定性指標に関して,消費エネルギーと安定性との間のトレードオフについて,いくつかの結果を得ている. 研究課題(4)については,安定化を実現するための,エネルギー効率にすぐれた汎用的手法を示すなど,いくつかの結果を得ている.また,安定性とエネルギー効率の両立に有用と考えられる,モバイルエージェントを利用した分散システム設計について,基本的なサブタスクをいくつか提案し,それらを実現する効果的な手法を提案している.課題(3)および(4)の結果については,シミュレーションや実環境での実験を行い,その実用的効果の実証も進めている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,研究課題(3),(4)への取り組みを中心に,さらに研究を推進する.具体的には,以下の研究を遂行する. (3) 分散システムの消費エネルギーと安定性とのトレードオフの解明 研究課題(1)で定めた消費エネルギーの定式化,および,研究課題(2)で定めた安定性の定量指標を用いて,分散システムの消費エネルギーと安定性の間のトレードオフ関係のさらなる解明を目指す.全域木構成,リーダ選出などの基本的な問題について,無線ネットワークおよび有線ネットワークのモデル上での,エネルギー効率と安定性のトレードオフの解明に取り組む.特に,研究代表者らがこれまでに提案してきた,緩自己安定性,出力安定性,故障封じ込め,通信効率にすぐれた自己安定性等の概念を拡張あるいは融合することにより,消費エネルギーと安定性に優れた分散システムの設計を目指す.また,本研究で得られた分散アルゴリズムの,計算機シミュレーションによる評価や実ネットワーク環境での評価も行い,実環境での有効性の実証を行う. (4) 分散システムのエネルギー効率にすぐれた安定化手法の確立 消費エネルギーの抑制と適度な安定性を両立させる分散アルゴリズム理論・手法の確立を目指す.本研究課題は研究課題(3)と密接に関連しており,相互に連携しながら研究を推進する.本研究で得られた分散アルゴリズムは,計算機シミュレーションによる評価や実ネットワーク環境での評価も行い,実環境での有効性の実証も行う.
|