研究概要 |
平成23年度は,平成22年度の設計の詳細化をさらに進め,3次元実装技術に基づくマルチベクトルコアプロセッサの主要構成要素である,3次元演算器,3次元マルチベクトルコア,並びに3次元ベクトルキャッシュの基本設計を完了させた.次に,これらの基本設計に基づき,3次元マルチベクトルコアプロセッサのソフトウェアシミュレータの開発を行った.併せて,次世代CFDコードであるBuilding-Cube法を本プロセッサを評価するベンチマークとして実装し,本アーキテクチャ向けチューニング手法の研究開発を行った.最後に,本ベンチマークを用いて3次元マルチベクトルコアプロセッサの性能評価を行った.性能評価の結果,3次元積層技術により、大規模なオンチップメモリの搭載が可能になり、演算性能と比較してメモリバンド幅が不足していることに起因する性能低下を軽減できると共に、メモリアクセス数を削減することで大幅な消費電力の削減が可能であることが確認できた。その一方,データパス上の配線に置いて,3次元TSVにより伝搬遅延の削減が可能な部分とそうでない部分が存在することが明らかになり,3次元化を適用すべき配線検出を容易にするツール等を研究開発することが必要であることがわかった.また,チューニング手法の研究開発では,ベクトルプロセッサにオンチップキャッシュ(ベクトルキャッシュ)を搭載した場合の性能特性について詳細に調査し、ベクトルキャッシュを有するベクトルプロセッサの性能予測モデルを提案した。この性能モデルを用いることで、アプリケーションに適した最適化手法を適用することが可能となり、実アプリケーションを用いた評価によりその有効性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年3月11日の東日本大震災により本年度の研究開発の開始が1ヶ月程度遅れたが,本年度の研究計画での実施項目である,アーキテクチャの基本設計,基本設計に基づくシミュレータ開発,シミュレータによるアーキテクチャの性能評価が行えたことから,おおむね順調に進展していると判断している.
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