研究概要 |
近年盛んに研究されているGPGPUを用いて、標数3のη_Tペアリングを高速実装し暗号化演算の性能を評価した。特に、NVIDIA社のGPUであるGTX285,GTX480,Tesla C1060,Tesla C2050を用いて、複数のη_Tペアリングを並列計算する実装を行った。その結果、有限体GF(3^<97>)上のη_Tペアリングは、GTX285上で1.47msecで計算可能であり、GTX480上で1秒間で33710回のη_Tペアリング演算が実行可能である結果を得た。本実装はGPU上にηTペアリングの実装を行った最初の実装結果である。 一方、幾何領域ベースの鍵生成方法と関数型暗号に関する研究を進めた。秘密鍵を平面領域の点として表現し、暗号化ポリシを直線や凸体に対応させる暗号化方式を提案した。また、階層型IDベース暗号を拡張した方式として部分順序委任暗号を考察し、暗号文のサイズが定数となる匿名暗号を構成した。最後に、標準モデルにおいてIDベース署名付き暗号化方式を提案した。この提案方式は、変形双線形DH判定仮定の下で、適応型暗号文攻撃に対して識別不可能性(IND-CCA)かつ適応型平文攻撃に対して存在的署名偽造不可能性(EUF-CMA)を有することを証明できる。 最後に、ペアリング暗号の高速実装を昨年度に引き続き行った。今年度は、JavaベースのAndroid携帯電話にR-ateペアリングを実装し、BigIntegerの加減算におけるネイティブ関数の呼び出し回数の削減などにより、ペアリングの演算時間を約13%高速できる方式を提案した。
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