研究概要 |
本研究では,病歴と患者リストを管理する病院Xと喫煙や放射線従事者などの個人属性を有する組織Yの間で,喫煙とがん罹患率の相関を解析する疫学調査を目的とする.病歴は最も機微なプライバシー情報であり,組織を超えて比較を行うことが困難である.そこで,暗号理論に基づくプライバシー保護データマイニングプロトコル技術を適用し,XとYの持つ個人情報を漏らすことなく,個体集合(喫煙)Bの元での罹患率Aを表す条件付確率P(A|B)を計算することを試みる.従来のモデルと異なり,組織AとBがそれぞれの個体識別番号を独立に管理している仮定の上での計算に本研究の独創性がある.本研究で開発するプライバシー保護疫学調査システムは,罹患率だけではなく,異なる組織間での商品推薦など幅広い応用に適用の可能性を持つ. 平成22年度には,(1)垂直分割型プライバシー保護データマイニング技術の調査,(2)がん疫学調査の実施に関わる調査,(3)プライバシーを保護した疫学調査プロトコルの設計に取り掛かった.垂直分割によるデータマイニングの内,クラスタリングと情報推薦を行うプロトコルを取り上げ,その基本的な機能を調査して明らかにした実験結果の一部を国内会議に報告した.垂直分割の先見者であるJaideep Vaidya准教授に講演を依頼し,プライバシー保護グラフ同定に関する最新研究を調査した.
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