研究課題/領域番号 |
22300039
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
八村 広三郎 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (70124229)
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研究分担者 |
李 亮 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (00609836)
遠藤 保子 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (10185168)
矢野 桂司 立命館大学, 文学部, 教授 (30210305)
赤間 亮 立命館大学, 文学部, 教授 (70212412)
西浦 敬信 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (70343275)
古川 耕平 立命館大学, 映像学部, 准教授 (90425025)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | デジタル・アーカイブ / バーチャルリアリティ / モーションキャプチャ / 可視化 / キャラクタアニメーション / 舞踊 / デジタルミュージアム |
研究概要 |
本研究の長期的な目標は,主に日本における無形文化財の身体動作の情報を,デジタル技術によって計測・保存し,継承するとともに,蓄積された多くの動作データを定量的に解析することによって,人間にとって舞踊や芸能とは何かについて解明しようとすることである. 今年度は,今までの研究経過と成果を基礎とし,次のような方向の研究へと発展させた.すなわち,モーションキャプチャを用いた舞踊における身体動作の記録・解析・表示の研究を,従来からの,1人の動作を対象としたものから複数人による舞踊・演劇・祭礼にまで広げ,複数演者,伴奏音楽演奏者,観客などの相互作用を身体動作の観点から比較し,それらの関連性,特に,いわゆる「ノリ」「もりあがり」などの現象を,動作の引き込み,間合いの取り方などの観点から解明する.動作解析,感性情報処理,仮想コラボレ ーションによる実験などの手法を用いる.また,複数人の動作による舞踊,演劇,祭礼に関して,完成度の高い高度なデジタル・アーカイブを構築する.具体的には,以下に挙げる課題を取り上げた. (1)身体動作の特徴抽出とこれに基づくモーションデータの類似検索の手法を開発した.(2)舞踊譜Labanotation を日本の伝統的な舞踊「能」の仕舞動作の記述とCG再現に応用する方法を開発し専門家による評価を行った.(3)舞踊における「ノリ」の状況など対する観客の存在の影響についてモーションキャプチャを使って分析した.(4)京都祇園祭の山鉾巡行の様子について,参加する町衆の身体動作だけでなく,巡行を鑑賞する見物人も含めて,「モノ」の展示だけでなく,VRによって「コト」の展示を行うデジタル博物館の一例として実現した.山鉾巡行の鉾の上にのって,前方の3DCG映像とともに,お囃子や回りの雑踏の3D音響,さらに,巡行時の振動と揺れを体験するシステムを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度交付申請書の「研究目的」にあげた(1)のヒップホップダンスの動作解析については,一応の成果を得て国際会議での発表,また新年度へとまたがったが,雑誌論文の採択通知も得た.(2)バーチャル山鉾巡行については,モデリングをさらに進展させ,また,巡行の仮想体験システムの実験を行っており,国際会議において論文発表を行った.観客動作のシミュレーションと着衣シミュレーションについては,一応の成果を見ているが,まだ完全なものでないと考えている.(3)仮想ダンスコラボレーションの実現については,前年度と同様,担当大学院生の休学という事情により十分進めることができなかった.また,(4)身体動作の検索システムの公開は,基本的なシステムデザインは完成したが,権利関係のある舞踊データの公開用のデータの整備が遅れているために,公開はまだできていない.(5)Labanotationの利用については,さらにタイの民族舞踊への応用を進めている.以上の状況により,一部未完成のものがあるため,②と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
基本的に平成22年度開始時の研究目的と研究推進方策はそのまま堅持し,研究計画の大きな変更は行わない.Labanotation による「能」の仕舞の記述と表現については,ほぼ目的を達成することができたので,今後は,対象の舞踊を拡大することと,舞踊家による詳細な評価を行う.また,祇園祭の「バーチャル山鉾巡行システム」について完成度を高め,さらに利用者とVR空間とのインタラクションを導入するなど,最終的に「巡行時の振動体験システム」の完成にむけて注力していく.舞踊動作の解析については,類似動作検索システムもほぼ目標を達成したので,権利関係のクリアできたものから検索システムを公開する.観客が舞踊動作に与える影響,日本舞踊における技の解明などを重点的に行っていく.仮想ダンスコラボレーションについても,研究体制上の障害が回避できたので,今年度での完成と実験を目指す.
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