研究課題/領域番号 |
22300040
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
暦本 純一 東京大学, 大学院・情報学環, 教授 (20463896)
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キーワード | テレプレゼンス / 遠隔コミュニケーション / 非言語情報 / 視線情報 |
研究概要 |
本研究では遠隔地間でのコミュニケーションにおいて参加者の3次元的実在感や視線・表情・空間的整合性などの非言語情報を正確に伝達・共有する技術を実現することを目標にしている。顔の空間立体表示に注目し、参加者は特殊なゴーグル等のデバイスを装着する必要がなく、たとえば遠隔医療における患者と医師のコミュニケーションなどへも適用可能である。 今年度は、三次元スキャナー・三次元プリンタ・熱可塑素材によるスクリーンの真空整形により参加者と同一形状の顔スクリーンを簡易に製造する技術を確立した。このスクリーンを利用した3自由度(顔の上下運動および傾き運動に相当)の動作を可能にするデレプレゼンスシステムを構築した。マイクロレーザープロジェクターを搭載し投影映像が顔スクリーンの凹凸によらず鮮明に再現できることを確認した。参加者の顔形状を単眼カメラおよびコンピュータビジョンによって認識し、常に正面顔の映像を補正取得し、同時に頭部運動パラメタを抽出するソフトウェアを開発した。この組み合わせにより、利用者に負担をかけずに遠隔地の顔スクリーンに本人の顔表情および頭部運動を伝達する遠隔コミュニケーションシステムの基本部分が構築できた。 このシステムを実際に利用し、視線情報などの非言語情報が正しく伝達できているかを評価実験により確認した。実験の結果、従来「モナリザ効果」として知られている、平面ディスプレイではアイコンタクトが誤って成立してしまう状況(カメラ目線の参加者はどの方角から見てもアイコンタクトがあるように感じられてしまう現象)においても、本システムを利用すると参加者が実在しているように正しく視線情報が伝達できることを確認でき、また平面ディスプレイと比較して参加者の位置関係が自由になるなどの成果が得られることを実証できた。これらの研究成果を査読付き国際学会2報、査読付き国内学会1報として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
特に立体顔による遠隔存在感の利用者評価において当初の計画を上回る結果を得られた。具体的には、従来のテレビ会議では達成不可能であった非言語情報伝達(正確なアイコンタクト)が本研究のシステムでは実現できていることを利用者評価実験によって明確に実証できた。その結果は査読付き学会(国際学会2件、国内学会1件)に投稿採録され(うち2件は今年度に発表済み)、国内学会論文誌への執筆推薦を頂いた。また次年度に繋がる成果として、顔形状を小型化した場合の基礎実験を先行して行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、顔スクリーンのより効率的な構築手段、自律移動型テレプレゼンスシステムへの発展、顔スクリーンを実際よりも小型化した場合のユーザビリティやコミュニケーションに与える影響の評価実験を行い、統合的にテレプレゼンスシステムとして利用可能な研究成果を整理統合する。
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