本研究では遠隔地間でのコミュニケーションにおいて参加者の3次元的実在感や視線・表情・空間的 整合性などの非言語情報を正確に伝達・共有する技術を実現することを目標にしている。顔の空間立体表示に注目し、参加者は特殊なゴーグル等のデバイスを装着する必要がなく、たとえば遠隔医療における患者と医師のコミュニケーションなどへも適用可能である。昨年度に引き続き、三次元スキャナー・三次元プリンタ・熱可塑素材によるスクリーンの真空整形により参加者と同一形状の顔スクリーンを簡易に製造する技術を向上させた。このスクリーンを3自由度(顔の上下運動および傾き運動に相当)稼働可能なプロジェクションシステム統合し、顔運動の追跡によるテレプレゼンスシステムとして実験を行った。今年度は特に、システムを実際に利用し、視線情報などの非言語情報が正しく伝達できているか、評価実験を行った。実験の結果、従来「モナリザ効果」として知られている、平面ディスプレイではアイコンタクトが誤って成立してしまう状況(カメラ目線の参加者はどの方角から見てもアイコンタクトがあるように感じられてしまう現象)においても、本システムを利用すると参加者が実在しているように正しく視線情報が伝達できることを確認でき、また平面ディスプレイと比較して参加者の位置関係が自由になるなどの成果が得られることを実証できた。また、昨年度までは頭部運動のみのテレプレゼンスシステムであったが、今年度、自律移動型テレプレゼンスシステムへの組み込み実験を行った。研究成果をまとめた論文誌論文を投稿し、採録出版された。
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