研究概要 |
情報の膨大さと多様性,そして利用者自身が情報ニーズを事前に充分詳細化していないことから情報アクセスは対話的探索的となる.視覚情報を用いたインタラクションでこの過程を支援しようと情報可視化技術を活用することが研究されているが,人間である利用者を内包するために,評価の数値化定量化が難しいことが課題となる.本課題はこの課題の解決を目的とし,対話的・探索的な情報アクセスを支援する環境を評価する枠組みを確立し,情報可視化を活用した対話的情報アクセスの研究の加速と活性化を目指している. 評価の枠組み作りの第一歩として被験者実験をより洗練された方法で行い,様々なデータを収集する枠組みを設計し,情報アクセス技術の評価に関するワークショップNTCIR-9にてパイロットタスクVisEx(Interactive Visual Exploration Task)として実施した. VisExは,(1)対話的・探索的情報アクセスという行為全体に関する観察とする,(2)環境の評価にノイズとなって悪影響を及ぼす要因を可能なかぎり排除する,ことをポリシーとし,(1)共通の情報アクセス核部を利用する形で,情報アクセス環境を構築する,(2)対話的探索的情報アクセスの典型となるような共通の課題を実施する,ことで,より均質な条件の下で,情報アクセス環境を評価することを特徴としている. ワークショップでは4チームが参加し,参照用システムとあわせて,被験者実験を行い,情報アクセス結果であるレポート,操作ログ,アンケート結果等,多くの情報を収集することに成功した.それぞれのチームはそれらの分析を通じて提出システムの性能評価を行っている.この点ではVisExの枠組みの有効性が確認されたが,評価の枠組みの構築という観点からは,データから意味のある情報を読み取ることが比較的難しく,評価方法,特にタスクの選定等に更なる考察が必要であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
評価の枠組み作りの第一歩としての被験者実験をワークショップにおいて実施し,一定の情報を得た点までは予定通りであるが,得られたデータは,枠組みの改善の必要性を示唆しており,追加の検討が必要となっている.
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今後の研究の推進方策 |
得られたデータの分析進めると共に,対話的・探索的情報アクセスという行為が典型的に出現するタスクの設計を検討する.一概に情報アクセス行為といっても,そこにおける利用者の振る舞い,得られた情報の良し悪しの基準,情報アクセス行為という過程全体の良し悪しの基準等は,具体的な情報要求によって大きく異なる.今期は,対話的・探索的情報アクセスをこれらの観点から下位分類し,それぞれの類型を抽出する.そして,それぞれの類型毎にその「よさ」を判断する評価尺度を構築・提案することで,タスク設計に繋げる.
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