研究概要 |
投票は優れた意見集約方法の一つである.近年,マルチエージェントシステム研究でも投票方式に関する議論が盛んとなり,また,実フィールドにおいても,例えば,Apacheプロジェクトにおいて,コード修正やパッケージリリースの可否が投票によって決められている Apacheにおける投票方式の特徴は,(1)逐次参加と,(2)m票先取の可決条件である.つまり,投票者は逐次投票を行うが,投票開始直後か,投票締切が近いかといった情報を得ることができる.また,単純多数決ではなく,先にm票集めた時点で投票は終了し,提案の可決・否決が決定される.これらは,オンラインコミュニティでの意思決定に対する,(1)投票者の負荷軽減,(2)意思決定の迅速化に役立つものと考えられる さて,あるApacheプロジェクトでは,20名程度のコミュニティで3票先取が可決条件となっている.ここで疑問となるのは意思決定の品質である.つまり,3票先取による結果が,メンバ多数の支持案と一致しているのかどうかである.仮に,メンバ全員に投票を強制するとすれば,つねに多数派の支持案に決定可能である.しかし,特にオンラインコミュニティにおいては,投票の強制は難しく,無理にそうすれば,メンバに負荷(何らかの費用)を生じさせる.つまり集合的意思決定の質と投票に要する費用とをどう釣り合わせるかという課題が存在する.この課題に対して,本稿ではモデルを用いた解析を行い,社会的余剰の観点では,選好比率が大きいときに,より注意深く可決票数mを選択する必要があることを明らかにした
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