研究概要 |
本研究は,哲学分野の知見を踏まえた学際的アプローチで,人工物と生体の機能のさまざまな定義を分類し関係づけることで,包括的に体系づけることと,機能的知識の相互運用性の向上を目指している.本年度はひきつづき人工物の機能に焦点を絞って人工物機能の分類と関連性について考察を深めたが,本研究の基盤となる人工物そのものの本質性についても考察を行った. 1.人工物の本質性に関する考察:人工物の本質について,製造行為や選択行為などにおける意図に注目して考察を行った,その結果,複数の人工物定義に関する基盤的レベルでの重要な違いと関係性を明らかにし,海外研究協力者と共著で国際ワークショップにおいて論文発表を行った-また,これらを包括的に説明する理論と,人工物と自然物(特に生体)の間の本質的関係性を明らかにした.さらに,このような考察を発展させて,次年度の主要な考察目標である人工物機能と生体機能の共通性について,重要な見通しを得ることができた. 2.製品ライフサイクルにおける関係付け:異なる機能概念を設計,製造,使用,故障といった製品のライフサイクルフェイズや変化物の違いによって関連づけるモデルを構築した. 3.機能参照オントロジーの充実:機能の分類視点のオントロジー的定義とそれに基づく機能概念の定義を,上記項目の考察結果を反映させることで,さらに充実させた.特に,機能語彙の分類視点を明らかにし,複数の機能語彙分類体系の分類観点の違いと関係性を示した.また,機能を捉える際の多様な視点について考察を行った. 4.機能的知識相互運用ツール(第1版)の設計:参照オントロジーに基づいて,参照オントロジーに基づいて多様な機能概念を扱えるようなツールについて,概念的設計を行った.これは従来から開発してきた機能的知識記述システムに基づいている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,本年度までは主に人工物とその機能に焦点を絞って考察を行い,ほぼ目的に見合う知見が得られた.さらに,人工物の本質性に関する考察を深めたことで,次年度の研究目標である人工物機能と生体機能との共通点に関する重要な見通しも,本年度中に得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に重要な見通しを得ることができた,人工物機能と生体機能の共通性と相違点についてさらに考察を進め,共通コア概念として同定することを重点目標とする.これまでの研究の進展によって,当初の計画立案時における予想よりも両者の共通性が大きいことが明らかになり,共通コア概念に基づいた包括的理論を構築することができる見込みが得られた.それに対応して,包括的機能定義とその理論の構築に重点をおき,知識の相互変換システムに関する比重を軽くする研究方針をとる.
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