研究課題/領域番号 |
22300066
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 孝明 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究グループ長 (20344187)
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研究分担者 |
川崎 隆史 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (60356839)
廣野 順三 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (50357878)
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キーワード | 情報センシング / 匂い / 生体機能利用 / 細胞アレイ / 分子認識 / 感覚センサシステム |
研究概要 |
匂いは、ヒトや動物の危険の察知や生活向上にも大きな影響を与えており、匂いに生物学的な意味付けが行われる嗅覚情報センシングが可能になれば、危険成分や犯人臭を検知する捜査ロボットや体臭の変化から疾病の発症を予告するホームロボット、食材選別や発酵プロセスなどの自動生産管理ロボットなど多様な嗅覚情報関連機器および計測・制御技術の開発が実現されると期待される。本課題では、1000種の嗅覚受容体から数種選び、培養細胞に機能発現させて細胞センサ化し、匂い要素情報自動強調処理により嗅覚情報を抽出する人工の鼻センサシステムを試作する。また、嗅覚受容体を改変し、対象の危険物成分を検知するセンサ開発を目指す。本年度の概要は以下の通り。 1)培養細胞の人工の鼻センサ化 細胞センサアレイ化に用いるマイクロウエル上での培養に適した同一嗅覚受容体安定機能発現HEK293培養細胞を作成するため、まず、ヒト人工染色体ベクター搭載用のカセットプラスミド3種を作成した。これを染色体ベクターに挿入し、HEK293細胞に導入したところ、約50%の細胞で均一な応答が得られることが確認された。また、異なる2種の嗅覚受容体遺伝子を人工染色体に搭載するためのプラスミド作成を試み、1種で成功した。 2)受容体信号のfeedforward抑制系および要素情報形成への寄与の評価 引き続き、ΔDマウス3匹を用いて追加実験を行い、2成分系の識別データの収集を終えた。得られた2系統の実験結果のどちらが正しいかを確認するために、3セット目の実験動物群のトレーニングを開始し、野生型については実験準備が整った。 3)マウス高感度受容体導入メダカ作成(メダカ嗅覚情報評価) 遺伝子組換え技術を用いてマウス高感度受容体導入メダカ作成を試みたが、艀化に至る系統が得られなかった。神経特異的プロモータ等を利用した限定発現による改善を試み、再作成を進めた。また、変異受容体の応答変化を調べたところ、全ての変異受容体で、膜移行していること、および応答の消失が確認された。より変化の小さな変異体での応答変化を解析すべく、複数の発現プラスミドを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度、微小マイクロウエルでの細胞センサアレイ化を試みたが、10mm径のガラス基板上では良好な遺伝子導入が困難となった。これは培地量減少のために細胞増殖率が低下し、遺伝子導入効率が大きく低減したためと推定された。この問題を解決するために、新たにヒト人工染色体ベクターを用いた4種遺伝子安定導入株化細胞の作成を試み、約5割の細胞で応答が確認される段階まで作成を進めたが、この追加で必要になった細胞改良の影響でアレイ化は次年度に再度試みることになった。
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今後の研究の推進方策 |
細胞センサアレイ化については、ヒト人工染色体を用いた安定発現株化細胞を追加、作成を試み、応答性を確認する。リガンド結合領域の確認についてはアミノ酸置換部位を拡げて、応答性の確認を続ける。また、行動実験による受容体信号抑制・処理機構の解明およびマウス受容体導入メダカ作成については予定通り計画を進め、前者2項目を含め、当初計画の目的の達成を目指す。
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