研究概要 |
平成23年度は従来の統計的学習理論の基本的モデルのひとつである隠れマルコフモデルを密度行列の表現による量子隠れマルコフモデルへの拡張の定式化と拡張された量子隠れマルコフモデルからデータを生成する量子モンテカルロ法の定式化を具現化するプログラムを実装し,具体的なデータを生成に関する数値実験をすすめ,生成されたデータのヒストグラムからモデルの妥当性の確認を行った.また,生成されたデータからの統計的学習理論に従うモデル選択および予測・推論を行う学習アルゴリズムの作成も平行して行っている.特に統計的機械学習の量子力学的拡張とそのプログラム実装については海外研究協力者であるD.MTitterington教授(英国グラスゴー大学)との研究打合せを通しての助言を受けながら進めた.研究分担者の井上純一准教授(北海道大学)からの助言をうけながら,スピングラス理論における平均場モデルに対する統計的解析手法の量子力学的に拡張された隠れマルコフモデルによる統計的機械学習理論への転用を部分的に進めた.更に,安田宗樹助教(東北大学大学院情報科学研究科)との協力により,量子確率伝搬法による統計的学習理論の構築に向けての準備の一つとして,スピングラス理論の1RSBとTAP方程式の立場からの確率伝搬法による学習アルゴリズムの構築と離散型のチェビシェフ多項式を用いた一般の離散状態をもつマルコフ確率場モデルにおける確率伝搬法による統計的機械学習理論の構築を行った.これらの定式化の一部は確率的画像処理計算モデル,都市交通の予測モデルへと応用し,その有効性の検証を行った.これらの成果の一部は「Philosophical Magazine: The Study of Condensed Matter」,「Journal of the Physical Society Japan」などを中心とする世界的にインパクトファクターの高い学術雑誌の査読付き原著論文として公開している.
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今後の研究の推進方策 |
すでに定式化を終えた密度行列の表現による量子隠れマルコフモデルによる統計的機械学習理論を様々のグラフ,ハイパーグラフ上で検証しつつ,津田宏治研究員の助言のもとでデータマイニングシステムへの有効性などを確認し,最終年度のとりまとめへと進んで行く.更に国立清華大学(台湾)のChiou-Ting Candy Hsu准教授からの助言を受けながらマルチメディアシステムへの応用の可能性の検討も行ってゆく.
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