研究概要 |
研究代表者らが開発した選択的不感化ニューラルネット(SDNN)は,従来型ニューラルネットの大きな問題点を克服するだけでなく,冗長次元に対してロバストである,高い汎化能力と近似精度とを併せもつ,など既存の関数近似手法にはない非常に優れた性質を備える.本研究の目的は,SDNNの更なる性能向上を図りつつ,その特性を生かした工学的応用を展開することである.特に,実空間において自律的に学習するロボット,筋電信号を用いた力の加減が可能な義手や新たなインタフェースの開発など,人間の支援や能力増幅を目的とした応用研究を推進する.本年度の主な研究成果は以下の通りである. 1.SDNNの関数近似能力の解析:やや複雑で部分的に不連続な2変数関数を用いた一連の数値実験を行った結果,SDNNは近似精度や汎化能力,学習速度や計算量などほとんどすべての点で,既存の関数近似器を凌駕することが示された.また,解析の結果,SDNNの高い関数近似能力には,分散表現と選択的不感化の両方が貢献していることなどがわかった. 2.強化学習の価値関数近似への応用:SDNNを多次元の連続状態空間におけるロボットの強化学習に応用した.数値シミュレーションの結果,学習効率が向上するだけでなく,事前の次元圧縮が不要である,次元が増加しても計算量があまり増加しないなど,既存手法にない特徴が明らかになった. 3.表面筋電位信号からの動作意図推定:これまでの研究成果を基に,実際に不特定の使用者がすぐに使うことができるリアルタイム推定システムを構築した.また,デモ用に「じゃんけん対戦システム」を作成して成果報告会等で発表した.このシステムは,従来手法に比べて使用者の負担がはるかに少なく,調整などに要する時間も非常に短いため,さまざまな人支援技術へ応用が可能である.
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