研究概要 |
本年度は,リンクの重みや情報流の向きを無視した基本ネットワークを主な対象として次の研究を進めた. 1)ばね電気モデルに基づく分子動力学法を利用した大規模ネットワークの可視化手法を整備した.加えて,重み付きの多重ネットワークならびに有向ネットワークの可視化についても当初計画を先行して予備的な検討を行った. 2)ネットワークに内在するコミュニティ(リンクが密の部分)を抽出する手法を整備した.また,コミュニティ間の関係強度を計測する評価関数を考案し,企業間取引ネットワークを具体例としてその有効性を検証した.これはコミュニティ間の関係性を定量的に議論することを可能にする新しい試みである. 3)大規模並列計算を占有的に実行するためのPCクラスターを新潟大に構築した.この設備の充実によって,ノード数が百万規模のネットワークの解析にも十分対応できるようになった. 4)金融機関別借入金データを購入し,研究用データベースを準備した.このデータベースによって構築される金融機関・企業間信用ネットワークは,時間的に変化する重み付き多重ネットワークであり,本研究にとって格好の研究題材となる. 5)代表者と分担者は,日本経済新聞「やさしい経済学」や財政金融ビジネス誌(時事通信社)の連載を通じて,本研究を含めて経済物理学に関する知識普及活動を行った. 来年度は,研究対象を一般化ネットワーク(重み付きリンク,ノード種の多重性,リンクの有向性)へ拡大し,必要な研究手法の開発を行っていくとともに具体的なネットワークを解析する.
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