研究概要 |
最終年度である本年度の主な研究目標は、subversioning レベルのインタラクションを可能とするようにSMART-GSを改造することであった。これについては予定どおり完成を見た。しかし、HCPのプロトコルを使うことが歴史家などの想定ユーザには難しすぎることが判明した。そのため、Dropbox のようなバージョン管理機構を持ちながら、それを一般ユーザには隠した形にUIを開発することとなったが、これは年度内に完成することができず、現在も開発を継続している。 本年度の計画外の大きな成果としては画像検索の並列化がある。これは最近のマルチコアPCの普及にともなって導入したもので、画像検索をサブプロセスに分割して検索する方法だが、これを京大文学部所有の西田幾多郎の手書き原稿に適用したところ、劇的なスピードアップが認められ、数千枚を標準的PCで1分程度で検索できた。この西田史料検索のための画像とデータを搭載したSMART-GS、は代表者が構築した「京都学派アーカイブ」を通して一般に公開した。 また、近畿大近藤教授のSMART-GSを用いた科研研究が始まり、これのサポートを行った。この研究は戦前の内務官僚内海忠司の日記の翻刻であるが、実験の結果, 時間記述や氏名・地名などの画像検索が極めて高い精度で行えることが判明した。その結果、画像検索を使い「午前」などのフレーズを数千枚の画像を通して一度に翻刻できる可能性が高いことがわかり、以前から構想していたこの自動翻刻技術を実現することとなり問題検討と設計を始めた。その研究結果として、最大の問題として翻刻結果の配置(行のどの位置に置くか)が最大の問題で、特に複数のフレーズの自動翻刻が衝突を起こす可能性があることが判明した。これを diff と同様の技術と、コンストレイント解決の方法で解決するという方向を得て研究を継続中である。
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