本研究の目的は、学術論文に関連する研究者等の利用に焦点をあて、調査を通じてその実態を明らかにするとともに、大学図書館等による情報提供環境が研究者、学生の学術論文の利用に関する期待と要求にどの程度まで応えているかどうかを確認することにある。このため、第一年次にあたる平成22年度においては、以下のような調査および準備作業を実施した。 1) 論文利用に関するアンケート調査の設計とテスト版の作成:調査実施のための調査設計(質問項目の設定、サンプリング、調査方法等)を行い、調査サイト(qualtrics.com)上にアンケート用ページのテスト版を実装した。また、大学図書館の機関単位での調査参加に向け、調査への協力要請と調査に対する要望事項の聴き取り等を行った。関連して、2010年10月にはASIS&Tの会場において、テネシー大学テノピア教授と打ち合わせを行い、国際比較のための枠組みを含めた調査実施計画および比較分析結果の公表の場の設定等について検討した。加えて、本調査の関連基礎資料としてJISC、UC Berkeley、Ithaka S+Rによる三つの調査報告書等の翻訳を行った。 2) アクセスログの収集と分析:機関リポジトリのアクセスログの分析を行い、アクセスログ分析を利用者行動の理解に繋げるための基礎となる「セッション」および「利用者」の抽出上の問題点について検討し、日本図書館情報学会において発表を行った。 3) 電子的情報資源の整備状況の調査:日本国内の国公私の大学における電子的情報資源について、日本図書館協会の『日本の図書館』の統計データの整理を行った。 4) 利用者インタビューの実施:論文の発見から入手およびリーディングに至るまでの一連の過程を実際の利用の文脈として理解するために、看護学関連の学術論文利用者を対象としてグループ・インタビュー調査を実施した。
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