研究概要 |
本研究は,手指が物体に触れる事態に対し,心理学実験と生理学実験を行い,触覚的注意を調べる。その際,手指の動きをともなわない受動的触覚と,手指の動きをともなう触運動感覚を取り扱う。また,触覚的注意と,身体運動や視覚との間の時空間特性を計測する。これらの実験を通じ,触覚的注意の機能を実験により定量的に解析し,物体触知の能動性を解明する。 平成22年度は,次の3種類の触覚の実験を行い,物体触知の能動性を吟味・解明した。 (1)触覚における注意移動の時間特性 従来は視覚で行われてきた同一物体効果(same-object effect)を触覚に移植した。そのため触覚用の装置を設計・作成し,制御用プログラムを開発した。同一物体効果とは,物体内の注意移動が物体間の注意移動よりも効率的に行われる現象を指す。これが視覚だけでなく触覚でも生起するかどうか調べた。また実験結果を論文として投稿した。 (2)注意移動における視触覚交互作用 同一物体効果の実験パラダイムを拡張し,視触覚交互作用を調べる。実験結果は国際会議で発表した。 (3)運動能動性と触運動感覚 開発中の片麻痺リハビリテーション支援機器を用いて,運動能動性の水準を制御し,重さの弁別を実験課題とする実験を行い,物体触知の能動性を調べた。また実験結果を論文として投稿したが,不採録となったので,現在改稿中である。 またこれらの実験に加え,筋電義手を用いた実験について専門家の医師と連絡を取り,実験遂行について協議した。
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