研究概要 |
本研究は,触覚の注意機能に焦点をあて,身体に触れる物体についての触覚的注意を解明することを目的としている。そのため,手指が物体に触れる事態に対し心理学実験と生理学実験を行い,触覚的注意を調べる。その際,手指の動きをともなわない受動的触覚と,手指の動きをともなう触運動感覚を取り扱う。また,触覚的注意と,身体運動や視覚との間の時空間特性を計測する。これらの実験を通じ,触覚的注意の機能を実験により定量的に解析し,物体触知の能動性を解明する。 平成23年度は,次の4種類の触覚の実験を行い,物体触知の能動性を吟味・解明した。 (1)触覚における注意移動め時間特性 従来は視覚で行われてきた同一物体効果(same-object effect)を触覚に移植した。そのために前年度に作成した触覚用の装置に基づき,制御用プログラムを開発した。同一物体効果とは,物体内の注意移動が物体間の注意移動よりも効率的に行われる現象を指す。これが視覚だけでなく触覚でも生起するかどうか調べた。 (2)注意移動における視触覚交互作用 同一物体効果の実験パラダイムを拡張し,視触覚交互作用を調べた。結果は国際学会IMRFで発表した。 (3)運動能動性と触運動感覚 企業が開発中の片麻痺リハビリテーション支援機器を用いて,運動能動性の水準を制御し,重さの弁別を実験課題とする実験を行い,物体触知の能動性を調べた。 (4)触覚探索と触地図 従来は視覚で行われてきた図形探索課題を触覚に移植した。これにより視覚障害者が使用する触地図の性能向上を目指す。成果は電子情報通信学会論文誌に投稿し,採録が確定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
査読つき国際誌に4報を掲載し,査読つき国内誌や査読なしの論文も含めると10報以上を発表した。また,視覚障害者の協力を得られる環境が構築できたので,触覚研究を発展させ,視覚障害者を対象とした触地図の研究に取り組み,応用への道を開いた。
|