研究課題/領域番号 |
22300095
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岸野 洋久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00141987)
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研究分担者 |
渡部 輝明 高知大学, 医学情報センター, 講師 (90325415)
西山 毅 名古屋市立大学, 医学部, 助教 (40571518)
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キーワード | 統計遺伝学 / 時空間モデル / 階層ベイズ / スキャン統計 / 飛び石モデル / タンパク質の立体構造 / 稀なコピー数多型 / 遺伝子ネットワーク |
研究概要 |
本年度は、以下のように研究を遂行した。 1.拡張イジングモデルによるインフルエンザHAにかかる多様化圧の領域推定 タンパク質にかかる淘汰圧はコドンの進化モデルで推定できる。非同義置換・同義置換の速度比ωを用いて推移確率を表現し、遺伝子配列の尤度を記述する。本研究では、ωに関する立体構造上の空間的平滑化の事前分布を導入し、ベイズ因子の比較から空間相関のレンジを推定する。40年にわたるインフルエンザHAの配列を解析したところ、宿主細胞の受容体との結合部位に多様化圧がかかっていること、配列のみの解析は擬陽性を多く拾うことが分かった。 2.飛び石モデルとABCによるマラリア伝搬速度の推定 世界中からサンプリングされた519の熱帯熱マラリアについて、2つのハウスキーピング遺伝子sercaとadslを解析したところ、アフリカからアジア、オセアニアへと遠ざかるにつれ、遺伝的多様度が減少する様子が観察された。すなわち、マラリアの侵入以降突然変異が集団に蓄積するが、東に行くほど経過時間が短い。サブサハラを起源とするマラリアが東へ伝搬する様子を、飛び石モデルで表現した。遺伝子の合体過程の尤度計算は困難であるが、シミュレートできる。そこで、近似ベイズ計算により局所集団の成長速度と環境収容量、伝搬速度を推定した。 3.遺伝子ネットワークにおける稀な疾患関連コピー数多型の集積性 疾患の多くが稀なアレルにより引き起こされる場合には、ケースコントロール研究で関連遺伝子を個別に探索する方法は、検出力は低くなる。本研究では、スキャン統計により遺伝子ネットワーク上で疾患関連遺伝子の集積性を検出する方法を開発した。特定の遺伝子集合に限定して解析することなく、有意な部分ネットワークを抽出する。自閉症のケースコントロール研究における稀なコピー数多型を分析したところ、癌関連遺伝子の他にユビキチン関連の遺伝子群が抽出された。シミュレーションを通して提案手法が優れた感度および特異度を持つことが示された。
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