研究概要 |
平成23年度は,伝搬型アルゴリズムの位相幾何的研究,無限次元情報幾何に関わるカーネル法の研究,ネットワーク上のダイナミクスの代数幾何的研究,の3点の研究を推進した. この中で,特に無限次元情報幾何に関して,ベイズ推論へのカーネル法の一般的適用方法を提案した.これは,数値的近似を必要とする様々なベイズ推論に対して,行列計算に基づく全く新しいノンパラメトリックな一般的計算法を提案したもので,モンテカルロなどサンプリングによる方法に比べて高速な計算が可能となる.ノンパラメトリックベイズやApproximate Bayesian Computation(ABC)で扱われるモデルのベイズ推論計算に対する新たな選択肢を与えている.さらに,従来は有限次元パラメトリックモデルによって定義されていた確率伝搬法や期待値伝搬法を,無限次元のノンパラメトリックな方法に拡張可能であるなど,今後のさまざまな展開が期待できる. 伝搬型アルゴリズムの位相的研究に関しては,研究代表者のグループによって今までに得られたグラフゼータ関数による独自の解析法を,被覆空間を用いて拡張することを検討した.伝搬型アルゴリズムの繰り返し計算は被覆空間(無限木)上のアルゴリズムとみなされるため,より深い解析が可能になると考えられる.この研究は平成24年度以降も継続して進める予定である. ネットワーク上のダイナミクスの研究として,主として生物の代謝ネットワークなどに現れる力学系の不動点を,代数幾何的な方法によって解析を行った.通常のfIux解析では考慮されていない制約を導入することにより,より正確な解析が可能となる.現状は単純化された代謝ネットワークに適用し論文としてまとめている段階であるが,24年度に実際の代謝ネットワークに適用する計画である.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られたカーネル法によるベイズ推論は,さまざまな問題に適用が可能であるため,無限次元情報幾何にとどまらず,さらに一般的な無限次元のベイズ推論へと拡張して研究を進めていきたい.また,伝搬型アルゴリズムの位相幾何的研究に関しては,平成23年度は基礎検討にとどまったため,24年度は被覆空間による解析に注力して研究を進める計画である.
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