研究概要 |
(1) 我々は,すでに,水の並進配置のエントロピーに主眼を置いた蛋白質用の新しい自由エネルギー関数Fを構築している。水和エントロピーと脱水和のペナルティーなる2つの成分から成る。前者の計算では,精密な水分子モデルに基づいた分子性流体用積分方程式論を用いているにも拘らず,形態熱力学理論と統合することにより,ワークステーション上で,1つの立体構造当たり0.1秒程度でFを計算できる。非常に多くの立体構造の中から,Fを最低にする立体構造として天然構造を射当てるテストを4state_reduced, fisa, and fisa_casp3, Rosetta, lattice_ssfit, lmds, and semfoldなるデコイセット(トータルで133種類の蛋白質)に対して実行し,ほぼ100%の的中率を得た。これは世界最高の成績である。 (2) 我々の方法は,数多くの候補立体構造の中から最良の立体構造を選び出す場合に最適であるが,いかにして候補立体構造を発生させるかが問題となる。生物情報科学分野において育成されてきたComparative Modeling法(これが有力でない場合はFragment Assembly法)によって数多くの候補立体構造を発生させ,それらのFの値を計算した。この計算は,合計12種類の蛋白質に対して実行した。その結果,いずれの蛋白質においても,天然構造よりも低いFの値を与える候補立体構造は存在しなかった。これにより,我々の自由エネルギー関数の高い信頼性を実証することができた。同時に,12個のF最低の候補構造のうちの9個は,天然構造に極めて近い(RMSDが0.2nm以下)ものであった。その他,蛋白質の立体構造が鍵をにぎる種々の関連問題と取り組み,多くの成果をあげることができた。
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