研究概要 |
生体分子ネットワーク中に埋め込まれている生物学的基本回路の構造と機能の関係(設計原理)を体系化して,合成生物学の基盤となるデータベースを構築した。それを基にして,基本回路の複合化システムである大腸菌中央代謝経路(解糖系+TCA回路+ペントースリン酸回路)の設計原理を解析して,それを合理的に設計するための遺伝子組換え戦略を提案した。物質生産の基盤である中央代謝経路を再設計することによって,エタノール発酵系や乳酸発酵系の生産性を向上させて,環境エネルギー問題に貢献する。 電子回路を含む工学システムが,目的の機能を設計するために基本回路を組み合わせるのと同様に,合成生物学の出発点は,生物学的基本回路を理解することである。ネットワークモチーフ(フィードフォワードループ,単入力モジュール,自己フィードバックループ)を含めて基本回路のいくつかの断片は提案されたが,それは全体の一部にすぎない。生物合成の観点から,生物学的基本回路を探索して,その構造と機能の関係をデータベース化した。ネットワークモチーフは,転写調節ネットワークにおいて出現頻度の高い回路である。実際は,タンパク質相互作用,代謝物相互作用を含む多様な生物学的回路の存在が想定される。出現頻度に関わらず,特徴的構造や機能をもつ基本回路を微生物から哺乳類まであらゆる生物から収集した。基本回路の組合せによって,多様な機能をもつ高次の生物回路が生成することを示した。また,生化学的詳細が機能の発現に大きな変化を与えることを証明した。
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