研究課題/領域番号 |
22300106
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
饗場 篤 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20271116)
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研究分担者 |
葛西 秀俊 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (40403232)
原田 武志 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (30362768)
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キーワード | 脳・神経 / 遺伝学 / シグナル伝達 / 神経科学 |
研究概要 |
研究実施計画に基づいて、遺伝子操作マウスを用いて脳および神経細胞におけるmTORキナーゼの役割について下記の解析を行った。 (1)活性化型mTORTgの組織学的解析 昨年度に作製したTRE-mTORTgマウスをCamKII-tTATgマウスと交配し、Tet-offシステムによって生後7日齢以降に活性化型mTORを発現するTgマウス(CamKII-mTORTgマウス)を作製した。幼若CamKII-mTORTgマウスは、活性化型mTORの発現に伴って発育遅滞が引き起こされ、20日齢までに全て死亡した。生後12日齢におけるCamKII-mTORTgマウスの前脳の組織学的解析を行った結果、大脳皮質ニューロンにユビキチン陽性の細胞質封入体が多数見出された。このことから、生後脳におけるmTOR経路の活性化は、神経変性疾患様の表現型を引き起こすことが示唆された。 (2)活性化型mTORTgのシナプスの解析 TRE-mTORTgマウスをL7-tTATgマウスと交配することによって、小脳プルキンエ細胞特異的に活性化型mTORを発現するマウスを作出した。このマウスの小脳切片を観察したところ、細胞体が著しく肥大したニューロンが散在的に見出された。肥大化したプルキンエ細胞は樹状突起およびスパインの形態に異常が見られたことから、mTORは神経細胞のサイズ制御およびシナプス形成に重要であることが考えられた。 (3)CamKII-mTORTgマウスのプロテオミクス解析 上記の表現型を引き起こした分子メカニズムを明らかにするために、CamKII-mTORTgおよびコントロールマウスの大脳皮質抽出液を出発材料として、nano-LC-MS/SMによる定量的リン酸化プロテオミクス解析を行った。その結果、Tgマウスにおいてリン酸化量が上昇しているペプチドを多数同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
活性化型mTOR発現マウスの作製に成功し、表現型の解析もほぼ予定通り行い、mTOR経路の活性化による神経細胞の機能変化が認められたため。
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今後の研究の推進方策 |
活性化型mTORTgマウスの表現型の可逆性の解析、CamKII-mTORTgでのmTOR複合体の解析、新規mTOR関連分子の遺伝子操作マウスの作製を行う。
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