研究課題
昨年度、ARFに対するグアニンヌクレオチド交換能を持つSec7領域を有するsynArfGEF(別名IQSEC3,BRAG3)分子が、抑制性シナプスのシナプス後膜に特異的に局在するARF6に対する活性化制御分子であることを明らかにし、synArfGEF-ARF6経路が抑制性シナプス後膜での新たなシグナル経路として機能していることを報告した(J.Neurochem.,2011)。本年度は、synArfGEFの抑制性シナプスにおける発現をさらに明確にするために、グリシン作動性とGABA作動性抑制性シナプスが重複せず発現機能している網膜の神経回路系を用いて免疫組織学的検討を行った。その結果、synArfGEFは、網膜の内網状層において抑制性シナプス後膜足場蛋白質のゲフィリンとよく一致する点状の免疫陽性反応を示した。免疫電子顕微鏡解析により、アマクリン細胞の神経終末が形成する対称性シナプスにおいてシナプス後側の細胞膜直下にsynArfGEFの免疫反応の集積することが確認された。さらに、グリシン受容体及びGABAA受容体α1サブユニットとの二重染色法により検討した結果、synArfGEFの免疫陽性点状構造物はグリシン受容体及びGABAA受容体α1サブユニット陽性反応の61.3%及び41.7%に一致した。以上、本研究により、synArfGEFはグリシン受容体及びGABAA受容体を発現する抑制性シナプスの一部に発現することが明らかになり、抑制性シナプスの修飾機能に関与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の実験計画に従って、synArfGEFの抑制性シナプスにおける局在解析を完遂させ現在、論文投稿中であることよりおおむね順調に進展していると考えられる。一方、ARF6の局在解析に関しては、ウエスタンブロット解析上は良好な抗体の作成に成功したが、染色条件の最適化が難しく、やや計画に対して遅れている状況である。
synArfGEFの抑制性シナプスにおける機能の解明の為に、現在、子宮内穿孔法による特定の神経細胞への遺伝子導入法とドキシサイクリンによる遺伝子制御システムとを組み合わせた方法により、synArfGEF及びArf6の発現抑制や機能阻害を行い、抑制性シナプス形成や維持に関する検討を開始している。
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