研究概要 |
一般住民における認知症病型の近年の動向を調査するために、久山町研究で剖検によって確定診断された認知症の病型別頻度を調べた。1986年から2003年まで(18年間)の認知症連続剖検205例と, 2005年から2012年まで(最近8年間)の認知症連続剖検97例の病理診断に基づく各認知症別の頻度を比較検討した。1986年から2003年の期間では、アルツハイマー病(AD)が73例(35.6%)で最も多く、次に脳血管性認知症(VD)59例(28.8%)であった。以下、レビー小体型認知症(DLB)が3番目に多く、次に神経原線維型認知症と続いた。2005年から2012年においても、ADは52例(53.6%)であり最も多かった。2003年までと比較すると、ADは35.5%から53.6%と顕著な増加を示していた。一方でVDは13.4%であり、2003年までの28.8%と比較すると大幅に減少していた。ADの上昇またVDの減少は、それぞれ他の認知症を混合した病理診断においても同様の傾向であった。これまでの疫学調査で臨床的なADの有病率は1998年の時点で既に有意な上昇傾向を示している。2005年から2012年までの近年の剖検診断による検討でADの病理診断率が更に高くなっており、ADの有病率の上昇傾向は持続している可能性が高い。 病理組織所見の定量的評価が神経変性疾患の診断に重要であるが、タウ蛋白質陽性病変について従来は異常タウ蛋白質の大脳における広がりを見るBraakの分類を用いて半定量的に段階評価していた。しかし異常タウ蛋白質の蓄積に関連するリスク因子解明で、これまでの統計解析では有意なリスクが見出せていない。そこでより精度の高いタウ病変の定量的解析を可能にするために数理形態解析ソフトのMatlabを用いて色空間変換、K-meansクラスタリングを組み合わせた画像解析アルゴリズムを作成した。
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