研究課題
研究成果:アミロイドβ蛋白質(Aβ)の脳内における重合機構を明らかにすることを目的に、アミロイド形成の脳領域特異性に着目し、神経細胞膜依存的Aβ重合に焦点をあて、AD症例を含む高齢者剖検脳より調整した神経細胞膜試料を対象に解析を行っている。平成23年度においては、大脳皮質より分離した神経突起末端膜からラフト様のマイクロドメインを精製する手法を確立し、質量分析による脂質解析を開始した。また神経細胞膜上におけるAβの構造変化をNMRで解析するべく、GM1の含有量およびバイセルサイズの最適化を行うとともに、NNR計測の溶液条件の最適化を進めた。これにより、GM1含有バイセルが顕著にAβ凝集を誘起する条件を見出した。またバイセル上におけるAβの結合様式を原子レベルで解明するためのNMR緩和解析実験の条件を確立した。さらに、神経細胞膜上におけるAβ重合のAFMによる解析の準備として、シナプトゾームの脂質の各成分の種類を比率を定量化した結果に基づき、GM1、スフィンゴミエリン、コレステロール、リン脂質を含むモデル膜を構築した。このモデル膜に対するGM1クラスター結合性ペプチドの相互作用の解析を行った。一方、重合のAβの神経毒性発現機構の解明を目指して、GM1共存下で神経毒性を有するAβ42及びAβ40溶液の安定的な調製法を確立した。現在、Aβ溶液中の神経毒性体の特性及び検出方法について検討中である。意義及び重要性:Aβの脳内における重合開始の分子機構について、神経細胞膜の脂質構成の解析から物理化学的解析にまで踏み込んで解明を試みる研究はこれまでになされておらず、その意義は極めて大きいといえる。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題の中核となるヒト脳神経細胞膜脂質組成に関する質量分析については、ほぼ計画通り進行し、そのアミロイドβ蛋白質(Aβ)重合誘導性に関する原子間顕微鏡を用いた検討の準備に移行しつつある。以上より、おおむね当初の計画通りに進展していると判断される。
研究期間中に本研究課題の脳領域異存的なアミロイドβ蛋白質(Aβ)の重合及び蓄積への神経細胞膜脂質組成の影響について、当初計画に従って進める。一方、平成23年度の研究で得られた神経細胞膜構成脂質依存的な非アミロイド性Aβ重合について、神経生物学的視点から、鋭意研究を進める。研究課題の推進に特に支障となる問題はない。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (18件) (うち査読あり 17件) 学会発表 (30件) 図書 (1件)
J Neurosci.
巻: 32 ページ: 5223-5236
10.1523/JNEUROSCI.4860-11.2012
最新医学
巻: 67(第48回ベルツ賞受賞論文) ページ: 138-158
BMJ Open Journal
巻: 2
10.1136/bmjopen-2011-000649
EMBO Molecular Medicine
巻: 4 ページ: 344-352
10.1002/emmm.201200214
Neuropathology
巻: (in press)(未定)
10.1111/j.1440-1789.2012.01302.x
J.Neurochem.
巻: 121 ページ: 619-628
10.1111/j.1471-4159.2012.07668.x
J Neurochem.
巻: 116 ページ: 806-812
DOI:10.1111/j.1471-4159.2010.07006.x
Int J Alzheimers Dis
巻: 2011 ページ: Article ID925073
10.4061/2011/925073
Molecular Neurodegeneration
巻: 6 ページ: 20
10.1186/1750-1326-6-20
International Journal of Alzheimer's Disease
巻: (Editorial) ページ: Article ID286536
10.4061/2011/286536
Current Pharmaceutical Design
巻: 17 ページ: 1672-1684
10.2174/138161211796355074
Mov Disord
巻: 26 ページ: 2300-2301
10.1002/mds.23850
J.Human Gen.
巻: 56 ページ: 671-675
10.1038/jhg.2011.79
J Biol Chem.
巻: 286 ページ: 44557-44568
10.1074/jbc.M111.279208
J Neuroscie Res
巻: 89 ページ: 815-821
10.1002/jnr.22615
BMJ Case Reports
10.1136/bcr.01.2011.3685
BMJ Case Reports published online 1 December
10.1136/bcr.10.2011.4925
Neurosci Lett.
巻: 503 ページ: 167-170
10.1016/j.neulet.2011.08.013