研究概要 |
神経終末アクティブゾーンにはCAST, ELKS, Bassoonなどの構造蛋白質以外に、カルシウムイオンの流入を制御する電位依存性カルシウムチャネルVDCCが存在する。本年度は、まず、CASTがVDCCのbetaサブユニットと直接結合し、生体内においても分子複合体を形成していることを生化学的に明らかにした。VDCC betaサブユニットはCASTのC末領域に結合した。さらに、CASTはチャネル活性を有するVDCC alphaサブユニットとも結合したが、betaサブユニットとの結合よりは開かなかった。また、BHK細胞にVDCC複合体およびCASTを過剰発現させ、VDCCの機能を電気生理学的に解析したところ、CASTが存在することでVDCCが開口しやすくなることを見出した。アクティブゾーン蛋白質がVDCCの活性化を制御するという初めての報告であり、成果はThe Journal of Biochemistry誌に採択された(論文リスト1)。アクティブゾーン蛋白質とVDCCの相互作用の研究分野は始まったばかりであり、本成果は当該研究分野において重要な発見といえる。 VDCC betaサブユニットは1~4までのファミリーメンバーが知られているが、CASTは特にbeta4と強い相互作用を示した。betaサブユニットファミリーは脳内で異なる発現を示しており、CASTとの相互作用が脳内の異なる部位でそれぞれ調節されている可能性も高い。今後、脳の領域特異的にCASTがどのようなVDCCファミリーと結合しているかを明らかにすることで、脳内各部位(海馬や小脳など)における神経伝達物質放出の制御機構の違いを解明できる可能性がある。
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