研究概要 |
脳の老化にともなう神経可塑性の低下の原因について(1)寿命制御に関連するShc系遺伝子と、(2)Mdm20など細胞内での蛋白質凝集制御に関わる遺伝子との関連性について調べた。(1)のShc系遺伝子の研究からはShcB欠損マウスの脳では小脳依存性の運動協調性の減退があり、それがプルキンエ細胞の可塑性低下によること、少なくとも長期抑圧現象LTDが低下していることを見出した(Kakizawa et al., 投稿中)。これに関連して、小脳の一酸化窒素(NO)により誘導されるプルキンエ細胞の神経可塑性が老化脳では顕著に減退しているが、その原因が酸化ストレスであり、おそらくは何かの蛋白質のCys残基の酸化修飾に起因することを明らかにした(Kakizawa et al., Neurobiol. Aging, 2012)。また、(2)のMdm20については主に神経細胞内での蛋白質凝集物の消化(クリアランス)に関与し、その制御にAKTのSer-473のリン酸化が重要であること、そのリン酸化刺激が蛋白質凝集物のオートファジーによる分解除去へ向かわせることが判明した(Yasuda et al., PLoS ONE, 2013)。また、Mdm20の脳内分布についても詳細に検討し、機能的に連関するとされるNat5とは部分的に全く異なる発現様式をとることがあることを明らかにした(Ohyama et al., Gene Expr. Patterns, 2012)。
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