研究概要 |
生後発達初期の小脳プルキンエ細胞には、成熟動物には見られない過剰なシナプス結合が見られ、機能的にも未成熟な状態にある。生後発達の過程で過剰なシナプスが刈り込まれ、最終的に大人のプルキンエ細胞は1本の登上線維によってのみ支配されるようになる。多くのシステムにおいて、この過程は神経活動に依存するとされているが、シナプス入力の起始細胞が存在する神経核の機能的発達が、活動依存的シナプス刈り込みに果たす役割は明らかになっていない。本課題は、登上線維の起始核である下オリーブ核神経回路の生後変化と、これによる小脳への投射線維の活動パターンの生後変化を解析することを目的とする。 本年度は、生後発達期下オリーブ核ニューロンからパッチクランプ記録を行い、神経回路の機能的発達過程を調べた。下オリーブ核ニューロンに脱分極刺激を与えて発生した活動電位を解析したところ、生後7日から15日にかけて振幅が増大することが分かった。活動電位の持続時間は全体的に短くなる傾向があった。また、下オリーブ核細胞の特徴である、閾値下の周期的膜電位遥動(Subthreshold oscillation, STO)の生後発達変化の解析も行った。現在の所、生後7日齢の下オリーブ核ニューロンはSTOを示さないが、生後10日前後からSTOを示す細胞が増加する傾向があることが明らかになってきている。次に、Gap junctionを通過する蛍光指示薬を電極内液に加えてパッチクランプを行い、神経細胞間のGap junctionの形成過程を調べた。その結果、生後7日前後では、神経細胞間にGap junctionはほとんど形成されていないが、生後10日目前後からGap junctionの形成が始まることが分かった。
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