研究課題
本年度は、ゼブラフィッシュの胚・仔魚を対象にして、音を電気信号に変換する内耳とその信号を聴神経を介して直接受けるマウスナー(M)細胞の発達について生理学的に解析した。内耳については、有毛細胞の毛に結合する耳石を顕微操作することによって、有毛細胞が音という微弱な振動を感知するうえで、耳石の大きさが重要であることを明らかにした。この研究成果はScientific Reports(2013)に発表し、国際的に高い評価を得た。後脳の網様体脊髄路ニューロン群(RSNs)のなかで、M細胞だけが特異的な単発発火パターンを獲得する点に着目して、そのメカニズムを解析した。その結果、M細胞は発生初期には他のRSNsと同じように連続発火を示すが、ゼブラフィッシュが聴覚に応答し始める頃に発火特性を大きく変えることを見出した。さらにその分子基盤には2つの低閾値型カリウムチャネルの発現が重要であることを明らかにした。本年度はKv1.1サブユニットで構成される低閾値型カリウムチャネルの発達過程における発現、および補助サブユニットKvβ2の発現を解析し、それら2つのサブユニットの組み合わせがM細胞特有の単発発火に必要であることを証明した。KvβサブユニットがKv1.1チャネルの膜表出を促進するというメカニズムは今までにない知見である。研究成果はJournal of Neurophysiology (2014)に発表し、国内外で高く評価された。M細胞と同様に聴覚入力を受ける他のRSNsとM細胞との結合様式をゼブラフィッシュと同じRSNsを持つキンギョで調べたところ、M細胞からそれらのRSNsへ一方向の結合があり、同側には抑制性、反対側には興奮性の結合をもつこと見い出した(MiD2cmのみ例外)。その成果はThe Journal of Neuroscience (2014)に発表し(我々の図が雑誌の表紙を飾った)、国際的に反響を得た。このように、本年度は聴覚系の受容器と中枢ニューロンの発達に関して、極めて重要で意義深い成果を得た。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Neuroscience
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Journal of Neurophysiology
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Scientific Reports
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10.1111/gtc
http://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~m7home/