研究課題/領域番号 |
22300127
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
姜 英男 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (50177755)
|
研究分担者 |
豊田 博紀 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 准教授 (00432451)
齋藤 充 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 講師 (50347770)
佐藤 元 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (10432452)
|
キーワード | 運動ニューロン / 序列動員 / 漏洩カリウムチャネル / サイズの原理 / TASKチャネル / 等尺性収縮 / 三叉神経 / 閉口筋 |
研究概要 |
昨年度までに、三叉神経閉口筋運動ニューロンにおいて、漏洩チャネルであり細胞外pHに依存してコンダクタンスが変化するTASKチャネルの1型及び3型サブユニットのmRNAの発現様式が、細胞径により異なることをリアルタイムRT-PCR解析により明らかにした。そこで、大小の運動ニューロンにおける両サブユニットの細胞内局在を明らかにするために免疫組織学的解析を行なった。市販されている抗TASK1抗体はその信頼性が疑問視されていることから、独自に抗TASK1抗体を新規開発し、市販の抗TASK3抗体と組み合わせて用いた。 ラット咬筋運動ニューロンでは、その径に関わらず、細胞体においてTASK1のシグナルが強く、TASK3のシグナルが明確に認められない一方で、樹状突起では逆にTASK3が顕著で、TASK1が微弱であった。このことから、細胞体及び樹状突起の膜上には主に、各サブユニットのホモ二量体であるTASK1/1及びTASK3/3チャネルがそれぞれ発現しており、TASKチャネルのサブタイプ毎に明確に異なる細胞内分布を示すことが明らかとなった。TASK1及びTASK3サブユニットの細胞内分布はほぼ相補的で重畳は僅少であることから、TASK1/3ヘテロ二量体チャネルは存在したとしても極少数であると考えられた。 定量的RFPCR解析の結果を基に、小型ニューロン(20≦細胞体径≦25μm)における細胞1個あたりのTASK3サブユニットmRNA発現量を1とした場合の相対的発現量を算出すると、小型ニューロンにおけるTASKImRNAは約10、大型ニューロン(≧40μm)におけるTASK3及びTASKImRNAはそれぞれ約11と23となった。TASK1/3チャネルを無視した場合、大型と小型ニューロンにおける細胞1個当たりのTASK1/1及びTASK3/3チャネルの発現数の比は、先述のTASK1及びTASK3mRNA相対的発現量と一致すると考えられる。以上のことから、豊富な樹状突起を有する大型運動ニューロンは、静止膜の入力抵抗に関する古典的なアイデアに反し、小型運動ニューロンと比較して細胞膜面積の比を上回る漏洩コンダクタンスを持つと考えられ、三叉神経閉口筋運動ニューロンの序列動員は、より大きなdynamic rangeをもつ可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TASK3チャネルの性質を調べる実験を除いては、ほぼ全ての実験計画が達成されつつあり、研究目的である序列動員の分子基盤としてのTASKチャネルの分布パターンとその役割をRT-PCR、免疫組織化学、及び、膜電位測光を用いて明らかにした。また、NOによる序列動員の修飾もほぼ明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の課題としては、唯一、計画が難航しているTASK3チャネル電流に対する解析があげられる。これは、HEK細胞にTASK3チャネルを発現させた場合、安定した記録を得ることがきわめて困難であるためである。TASK3チャネルを発現させただけでは、培養細胞は維持できるが、TASK3電流を一旦活性化させると急激に細胞の恒常性が損なわれ、記録を維持できない。これを打開するため、さまざまな発現系を試みているが、現状ではまだ、成功していない。
|