研究概要 |
ニューロン電位活動の光学的測定法は、膜電位感受性色素で標本を染色し、膜電位変化に応じてその色素が示す吸光や蛍光の変化を光学的に計測するものである。組織標本で活動電位やシナプス後電位などの速い時間経過の電位変化を測定する際には、通常fast-response dyeと呼ばれる膜電位感受性色素が用いられるが、この色素は、シグナルが背景光の10-4~10-3程度と非常に小さく、single cellレベルでの応答を加算なしに検出するのはほとんど不可能であった。本研究は、新しいoxonol系色素を用いた細胞膜電位イメージング法を開発し、ニューロン電位活動の光学的計測法と中枢神経系の機能的システム解析に新機軸をもたらすことを目的とする。 本年度は、以下の手順で解析を行った。 1 色素の最適励起・蛍光波長の同定:蛍光分光光度計を用いた波長スキャンによって、色素の最適励起波長、蛍光波を同定した。得られた励起波長、蛍光波長のピークは以下の通りである。 DiBAC4(3): Ex490 nm, Em520 nm; DiBAC4(5): Ex586 nm, Em610 nm; DiSBAC2(3): Ex534 nm, Em556 nm; DiSBAC2(5): Ex628 nm, Em648 nm。 2 応答シグナルの大きさ:分離培養細胞系を用い、単一細胞の膜電位変化をどれだけの精度で計測できるのかを調べた。灌流液をnormal solution ([K+]0=5.0 mM)からhigh K+ solution ([K+]0=50.0 mM)に変化させ、細胞脱分極に対する蛍光シグナルのfractional change(ΔF/F)を測定した。
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