研究実績の概要 |
ニューロン電位活動の光学的測定において、組織標本で活動電位やシナプス後電位などの速い時間経過の電位変化を測定する際には、通常fast-response dyeと呼ばれる膜電位感受性色素が用いられる。この色素は、シグナルが背景光の10-4~10-3程度と非常に小さく、single cellレベルでの応答を加算なしに検出するのはほとんど不可能であった。本研究は、新しいoxonol系色素を用いた細胞膜電位イメージング法を開発し、ニューロン電位活動の光学的計測法と中枢神経系の機能的システム解析に新機軸をもたらすことを目的とする。 細胞膜電位は、Nernstの式に従い[K+]0/[K+]iに比例するので、灌流液中のカリウム濃度すなわち[K+]0を高くすることにより、細胞に脱分極を引き起こすことができる。high K+液を流す前と流した後、つまり、静止電位の状態であるコントロールと、脱分極をさせた時の蛍光を比較すると、脱分極させた時に蛍光が著明に増大した。膜電位感受性色素において、膜電位変化に比例するのは、色素が示す吸光あるいは蛍光のfractional change(⊿A/A,⊿F/F)である。High K+液に対する蛍光強度変化を定量的に比較するために、蛍光強度の変化分を背景光強度でnormalizeし、カラーイメージで表示した。その結果、個々の細胞における脱分極応答をイメージ画像としてとらえ、かつ定量的に比較解析することが可能であることが示された。high K+液に対する蛍光強度の変化は色素によって大小があり、現在定量的な比較解析をすすめている。
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