研究課題
本研究課題では神経回路機能の動作原理を解明するための方法論の構築と、それによる新たな「光・脳科学」を切り開くことを目指した。本年度は、そのために、培ってきた開口放出現象の光学的な解析法を発展させ、神経、分泌細胞の開口放出機構の解明を進めると共に、新たに神経活動と神経分泌のin vivo光イメージング法の構築を行った。特に、現有の多光子顕微鏡に、新たに非線形レーザー光学、新規蛍光タンパク質、光活性化を導入し、開口放出関連分子の定量的な機能アッセイの開発を試みた。また、神経分泌・開口放出機構の関連分子の同時可視化のための蛍光タグ化の方法論を確立することで、生体脳中において、開口放出を引き起こす分子機械として有力な候補分子(SNARE分子群)の動態、複合体形成などを多重可視化する方法論の確立を目指した。まず、1波長励起同時4波長蛍光計測系の高精度化及び、蛍光タンパク質シリウス、酸性小胞蛍光指示薬や水溶性蛍光色素等の使用による、SNARE複合体を構成するSNARE分子の動態と融合細孔の開口とを同時に可視化・定量するための観察システム系の確立を実施した。昨年度までに確立した破骨細胞への分化誘導の系において、本エンドはさらに様々な蛍光タンパク質タグを発現されるプラシミドを構築し、スクリーニングを実施した。また脂肪細胞モデル系において小胞の形質膜との融合細孔形成過程における分子動態を可視化する目的で、蛍光タンパク質をタグ化した糖輸送体の発現系の構築を実施した。さらに本年度は、蛍光タンパク質間のFRETを用いた新規の高感度遊離カルシウムイオンインジケーターであるカメレオンナノをユビキタスに発現するトランスジェニックマウスを用いて、カルシウム依存性開口放出の可視化解析法の開発を開始した。一方、軸性偏光ビームの発生に成功し、その有効性を検討すると共に、新規近赤外超短光パルスレーザーを用いて、生体脳深部イメージングの検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書の項目「開口放出の分子機構の解明」については計画通り、モデル細胞系において方法論の確立に成功したのみならず、新たな蛍光タンパク質型インジケーターの使用という新しい方向性も開けてきた。また、項目「軸性偏光ビームの発生・利用」については光学的な条件検索がほぼ完成し、実際の生細胞への応用可能性やデジタルデコンボリューションの有用性も確認出来た。項目「光刺激」については光学系や電気生理学実験に関する部分は完成したが、光学顕微鏡メーカーの都合で当初計画より少し遅れが出ている部分があるが、今年度早々に改善される予定である。
本年度は最終年度であるので、当初計画通り、昨年度までに確立したレーザー光学系や蛍光タンパク質発現系などを用いて、カルシウム依存性の開口放出などの細胞生理機能の可視化解析を推進させる。
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